日: 2011年3月17日

みなとみらい万葉倶楽部

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 どうにも気持ちがどんよりとしている。
 創作的なことが全然できない。
(それでもなんとか連載のエッセイを書いて送ったけど)
 鬱だ。
 地震の、主としてテレビの、影響にまちがいない。
 小説家という職業柄か、そもそもの自分の性格そのものなのか、あるシチュエーションに置かれた人の心の中を想像して詳細に自分の頭の中に構築してみる習慣ができている。
 被災地域の凄惨な映像を見ては、頻繁にそれを繰り返すものだから、精神が壊れ始めている。
 朝からいよいよ、原子力発電所が大変なことになっている。
 地震と津波の災害は、時間とともに改善していくわけだが、こちらは起こりうる可能性として、もしかしたら破局に向かっているかもしれない。
 工場労働者だったこともあるし、大きなプラントをいくつか見学したこともある。
 沸騰水型と加圧水型の区別がつく程度の、原子力発電についてのそこそこの知識もある。
 テレビを見ていると、どうしても事故が起きている現場のようす、被曝しながら作業員がやっていること、などが頭に浮かんでしまう。
 わりと心の健康には自信のあるほうだけど、いまはかなり不味い状態だ。
 原発がまずいことになる可能性があるので、勇気がいるといえばいるのだけれど、しばらくの間、テレビを見るのをやめることにした。
 というわけで、その手段の一つとして歩いて10分ほどの銭湯「万葉倶楽部」に行ってみることにした。
 温泉に浸かってゆっくりしながら、リクライニングの椅子で読書をする。
 とまあそういうイメージだったのだけど、実際は節電中で室内が暗く、読書はちょっとむり。
 視野の隅でテレビを見ている人がいるので、時折そっちをチラ見しておけば非常事態になればわかるだろう。
 椅子に身体を埋めるうちに、うとうと。
 目が覚めると日が暮れていた。
「ああ、休んだ」という実感がある。
 朝から胸に引っかかっていたのは、政府や東電の原発に関する情報発信のしかたが昨夜あたりから変わっていること。
 何かを隠している感じがしないでもない。
 別ルートからいろいろな情報も耳に入る。
 一応、避難の準備をしておいた方がいいと判断して、当座の衣類など避難所生活を想定した荷物の準備をしておくことにした。
 一方、反原発側である原子力資料室と東京都がそれぞれに測定している放射能レベルの数値を比較してみたところ、ほぼ一致していた。
 それによって、少なくとも現在の時点で、すでに大量の放射能が出ているという事実はなさそうだと判断した。(放射能レベルについて国や東電が嘘をついていないと判断できる、ということ)
 とりあえずすぐに逃げることにはならなそうだ。