日: 2006年7月26日

初めて執筆依頼を断る

 午前九時に家を出て綱島へ向かう。久しぶりに晴れたなあ。暑い。
 プロの写真家でもあり、内科医でもある高校のクラスメート、井上冬彦の診療所へ。
 超音波で胆嚢ポリープのようすを見てもらうのが目的。六年ほど検査もしていなかったが、安定しているようだ。「起床時に背中が痛いのは100%胆嚢のせいではない」と断言されてしまった。
 血液検査の結果は明日聞く、ということで帰宅。
 夕方まで自宅で小説書き。
 夕方六時、駅前の崎陽軒本店のティールームで打合せ。
 ここ三年、毎年、引き受けてきた仕事なのだけれど、あまりに原稿料が安いので、次回については最低限の条件を提示した。
 別に偉そうにするつもりはないのだけれど、小説以外はすべて「お金のためにする仕事」。(いえ、小説もお金にするために書いているわけですから)小説を書く時間やテンションを犠牲にするには相応の対価をもらわないと。人生の残り時間が少ないので。
 あげくに「ストーリーを考える練習になるんじゃないですか」だって。
 冗談じゃありません。日常生活からして100%小説のために生活しているのだから、本当は自分の小説以外のことに「ストーリーを考える」という大切なテンションは使いたくないけど、お金のために心を切り売りしているのですよ。
 できるものなら真剣勝負の試合をたくさんこなしたいという時期に、僕にはいまさら練習に費やせるほど心の体力に余裕はありません。本番(小説)のために心の体力を温存したいのに、お金のために他の仕事も引き受けているのだから、その肝心のお金を十分いただけないとなったら、やっぱり引き受けるわけにはいきません。
 依頼主は出版の人ではなくメーカー系の人。なので、物書きが商品となる文章を書くためにどれだけのものを注ぎ込んでいるのか、理解できないのも無理からぬこととは思うけれど、原稿料という形で金銭的に正当に評価する気がないのであれば、ビジネスの交渉のテーブルにはつけない。
 ということで、文筆業を開業して以来、初めて原稿の依頼を断りました、というお話し。
(もちろん、適正な対価を払ってもらえるようなら喜んで書かせて戴くのですが)