日: 2006年7月13日

テクノロジーの保つ旧交

 20年ほど前からオンラインで知り合った人たち。
 その中には、いっしょに遊んだり、いっしょに仕事をしたり、かなり親密につきあうようになった人もたくさんいて、いまではむしろ、交友範囲の大きな部分になっているし、お互いの人生にも影響を与え合ったりもしている関係だったり。
 そういう人たちとは、たとえ直接会う機会は少なくても、互いに日記を読んだりネット上で意見交換をしたり、親戚や会社の同僚なんかよりも、よっぽど互いのことをよく知っているなんてことも珍しくない。
 昨晩も、そんな人と会った。関西から仕事で出てきていたのだ。
 20年ほどのつきあいがあるのに、会った回数はそれほどでもなく、それでもなんとなくつかずはなれず互いの近況を把握している。そんな関係のひとりだ。
「最後にあったのは10年以上前だよねえ」
「**さんの結婚パーティの時だから」
 ……なんて話から始まって、仕事の話をしたりヨットの話をしたり(彼はかつて有名なレース艇のメンバーだった)。
 経済小説「も」書いている人間としては、いろいろな業界の人の話を聞くのもとても楽しい。もちろん小説家にとってはどんなことも芸の肥やしだからあらゆる話が自動的に取材みたいなものでもある。
 
 会う機会があまりない、という意味では細いつきあいなのだけれど、お互いのことを結構知っているという意味では、その年月の長さも含めて、けっこう太いつきあいのようにも思う。
 彼を待つ間、新橋で新しく見つけた「バル・ビエン」(カタカナでしか書いていないからわからないけれど、スペイン語で「よいバー」という意味だろう、多分)というスペイン風立ち飲み屋で、サラリーマンらしい人たちの会話をきいて、あまりの内容の無さと理想の低さについ小さく腹を立てていたのだけれど、彼と話をしたらそんなこともすっかり吹き飛んでしまった。
 コンピュータと通信というテクノロジーが、こうして新しい人間関係のあり方をつくっている、ということに、技術者だった僕はけっこう誇りを持っていたりもする。
 この日記を携帯から読んでいるはずの母にしても、いっしょに住んでいた頃よりも今の方が、息子の暮らしぶりや考えていることをよくわかっているんじゃないかな。