日: 2006年12月8日

原点

 今日は12月8日。
 ジョンレノンの命日で、日米開戦の日。
 十余年前の日、高校の同級生を事故で失った。
 ばかな自損事故だった。
 だが、彼は僕の大切な友達だった。
 ふたつの大学、外交官試験、歯科医師国家試験。
 あまりにも長い勉強の時代とひきかえに、彼が得たものは、まもなく開業できる自分の診療所、モデル出身の美しい妻、お嬢さん学校にかよう愛娘、自分のためのポルシェ、妻のためのベンツ。
 30代半ばの彼の死のその時、僕は思った。得られるもの得られないもの。
 人生は突然終わる。明日は突然来なくなり、今日は突然過去になる。
 人生は長いとは限らない。
 やりたいことは今すぐにやれ。彼の死が語っていた。
 その時、僕は自分がいちばんやりたいことは何かを考えた。小説を書くことだと思った。
 それから10年以上が経ち、2005年の奇しくも同じ12月8日、僕の初めての小説の本が出版社を出ていった。
 この日は、僕の原点なのだ。
 だから、昨年と同じように今年も日記にこのことを書く。 何度でも。
 彼から譲り受けたビートルズのレコードがあったはずだが、どの一枚だったか、いまでは思い出せない。
 12月8日。
 理由は同じではないけれど、この日、涙を流す人が、世界中にたくさんいる。
 でも、ジョンなら言うだろう。
 毎日、世界のどこかでたくさんの人が不慮の死を遂げているんだ。
 それを思い浮かべてみてくれと。