日: 2014年4月13日

てるりん祭

 いよいよ、本日はてるりん祭本番。
 島唄の一流どころが**組出場する「大統領」こと照屋林助のトリビュートイベント。
 豪華メンバーなのに商店街で行われ入場無料。
 林助の次男・林次郎と協力者たちの手作りで、補助金も拒否、一流の人たちばかりなのに交通費だけで出演。
 てるりん祭は沖縄民謡界の紅白歌合戦。
 だからここに出演できることが一流の証になっている。
 出演させてくれと申し出てくる演奏家たちもたくさんいるが、すでに午後1時から9時までの野外イベントでもあり、断っている状態。
 実際、当日も飛び入り出演を狙ってやって来る歌い手もあって、出演できずに外でゆんたくして帰って行く。
 出演者は自分の出番にゲストとして、無名の人や弟子を加えて、いつもより大編成で臨む者も多い。
 てるりん祭のステージに立つことが、沖縄の民謡歌手の勲章なのだ。
 司会は立川志ぃさー。先日、ラジオ沖縄の番組収録に黄金町にやってきた。
 つまり立川志ぃさーは、本土で言えばスマップの中居君に相当する。(うむ、これはちょっと言い過ぎか)
 中央パークアベニューを通行止めにして、ステージを組み、椅子を並べて開催される。
 入場無料出入り自由なので、来場人数を正確にカウントするのは難しいが、のべ700人は下らない。
 NHKの紅白歌合戦だからこそ、紅組白組あれだけのスターが揃うように、これだけのメンバーをプロモーターが自分で集めるのは不可能であり、主宰者の所にはパッケージとして5000万円で本土で開催してくれというオファーもあるらしいけれどそれも拒否。
 てるりん祭は、沖縄の、コザの、魂のイベントであり、商品ではないのだ。
 僕にとっては震災の一ヶ月後、殺伐とした横浜から逃げるようにやってきて体験した以来、二度目の体験になる。
 八時間のイベントのあいだに演奏される島唄は、ヤマトから来た僕にはどれも似て聞こえる。
 だから、ひとつひとつは素晴らしくても、ずっと真剣に聴いているとやがて退屈に感じられてしまう。
 ところが、やがて、単調なリズムと旋律は、浜辺に打ち寄せる波のように、バックグラウンドの心地よい調べになっていく。
 並んだ椅子に座って聴いたり、立って周囲を回って友人知人とゆんたくしたり、やがて日が暮れて迎えるはずのクライマックスを待つ。もちろん、呼び止められて座ると、自然に酒が出てきたり、初めて会った人に紹介されたり。
 そして、今日、知り合った素敵な人は、ひとりのオバア。
 コミュニティFMでパーソナリティをやっているそうで、おそらくは日本で最高齢のラジオパーソナリティ。
 そして、つい最近まで、女子高生だったのだという。
 沖縄のオバア、恐るべし。
 まもなく日が暮れるという頃、雨が降った。
 てるりん祭は毎回雨が降る、そして、前日までの予報では夜に降るといっていたのが、当日の朝の予報では深夜になるまで降らないと報じられ、今年こそ、雨の降らない「てるりん祭」か、と思われたが、そこはさすがのてるりん祭、やっぱり降った。
 最後の二組のひときわ素晴らしい演奏が終わり、フィナーレの園田青年会のエイサーになったころには本降りだったけど、雨の中で演技する若者たちの前で、誰も雨を避けて席を立つものはいなかった。