日: 2006年8月14日

古巣の病院、古巣の工場、夕立の岩風呂

 眠い。
 が、午前8時起床。睡眠時間4時間に少し足らないか。
 本日より妻入院のため、車で相模原の北里病院へ向かう。
 ガラ空きか、メチャ混みか、どちらかだと思っていたらガラ空きの方だった。
 運よくスイスイと受付時間よりも早く着いたので、病院地下のベーカリーカフェにて朝食。黒糖パンの玉子サンドとカボチャのスープ、そして、少し生野菜、コーヒーで、550円。
 受付が済むと病室へ案内される。
 6人部屋なら健康保険で全額カバーされるが、とりあえず空いていないからと4人部屋。いわゆる差額ベッドというやつ。「とりあえず空いてない」というのは、まあ病院経営上の常套手段だけど、病院の経営というのも楽ではないのはよく知っているので、このあたりは暗黙の了解みたいなものだ。
 こういうことをしなくてもいいようにもっと制度そのものが調整整備されているのが本当だと思うけれど。制度が緩すぎると病院が経営努力をしなくなるから、そのあたりの最適化がむずかしい。
 本人は、昼の間も散発的にいろいろあるようだが、付き添い家族のこちらは、夕方5時か6時に行われる手術医からの説明まで用無し。
 病院のロビーのソファーでは疲れるばかりなので、近くのスーパー銭湯を探す。
 携帯で検索するとさいわい車で15分のところにあるらしい。
 イマイチ場所がよくわからないままに走っていると、予想通り道路脇に案内看板がみつかる。どうやらタオルを借りるなら200円払って会員になったほうが得だったらしいのだが、自動販売機で券を買ったあとにわかっても後の祭り。
 こういうところで客に損をした気分にさせるのは、サービス業としては下手なやりかただと思う。24時間営業ではないので、仮眠をとるにはいまいちのところでもあったけれど、居場所のない身の上故、まあいっか。
 あれこれ、ちょっと情けない気持ちで迷いながら入ったところだったが、露天風呂にいるうちにざぁっと夕立が来て、雨に打たれながら岩風呂に入っていたら徐々に幸せになってきた。人間、単純なものである。
 岩風呂のすぐ脇に4人ほど大の字になって眠れる場所があり、そこで50分ほどうとうとしたら睡眠不足もわずかばかり回復。
 風呂上がりは、腰に手を当ててフルーツ牛乳(120円)を飲む。
 少し原稿を書くが、銭湯ではしゃぎ気味の年配の人たちの声が騒がしくてちょっとムリ。
 というわけで、久しぶりの相模原なので、車で30分ほどのNEC相模原工場まで行ってみた。半導体技術者だった頃、ここには7年くらい通っていた。
 世田谷からここまで、朝6時頃家を出て行って、終電で帰ってくる毎日だった。風呂屋が空いている時間に帰って来られないので、昼休み、会社の運動場の更衣室でシャワーを浴びていた。3食、社員食堂で食べていた。
 あのころの日本企業の技術者はそうやって世界一を保っていたのだ。
 午後5時、明日の手術について、医師からの説明、一時間弱。
 何事もなければルーティンの手術で左股関節が人工のものに置きかえられるわけだけれど、命を落とす可能性も、重大な感染症にかかる可能性も、二度と目を覚まさない可能性も、重大な後遺症が残る可能性も、それぞれに可能性としてはあるわけだ。
 何十億年をかけて地球が、神様が、つくった人間という動物の関節を、この三〇年くらいの人間の技で人工物に置きかえるのだから、神様に味方についてもらうしかない。
 十五年前に同じ病院で人工関節にした右股関節は、目立った痛みもなく非常に経過良好だとレントゲンを見て医師が言う。
 左股関節もうまくいきますように。それよりなにより、いざとなったら足なんて治らなくてもいいから重大なことになりませんように。
 病院のロビーのソファは眠るにも仕事をするにも具合が悪いので、帰り道、Sports Authority へ立ち寄って、Coleman の折りたたみ式チェア(1999円)を買う。これで病院での待ち時間が有効に使える。これ下手な豪華家具よりもよっぽど座り心地がよいのです。
 明日は朝六時半に家を出なくてはならないので、早めに寝る。
 ほとんど原稿進まず。まあ、そういう日もあるさ。