日: 2007年7月27日

初めてのMRI  科学少年の興奮

 本日、27日、いよいよ待ちに待ったMRI検査の日だ。
 MRIとは Magnetic Resonance Imaging の略。
 ちょいと物理学をかじった人間にとって、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)を用いて、自分の断面を見るなんて、なんともはやワクワクするようなことなのだ。
「核磁気共鳴コンピュータ画像診断装置」だから、もともとは、NMR-CTと呼ばれていた。ところが「核」というのが原子力を思い起こさせて被爆がないのに放射能を浴びると誤解されそうなので、MRIと呼ぶようになったのだそうだ。ここでは放射能を出すような核反応は起こしていない。水素の原子核を共鳴させて水の分子の並び方を少しけ変えているだけ。
 装置の原理は、巨大な磁石の輪の中心に人間を入れる。でもってその磁力で身体の中の水素原子(水)を揺すぶると、その動き具合がコンピュータで映像化されてくるというわけだ。
 その巨大な磁石というのが超伝導マグネット
 そうあの物理少年憧れの「超伝導」だ。その超伝導を起こすための仕掛けにはヘリウム希釈冷却が用いられている。あの「ヘリウム」だぜ。(もっとも最近は、口から吸い込んで喋ると自分の声がアヒルの声になるオモチャとしてヘリウムガスが売られていて、全然、ありがたみが下がっているんだけどさ)
 昔、テレビでみた「タイムトンネル」のような装置。
 更衣室にはヘアピンだろうとブラジャーのホックだろうと、「金属は持ち込むな」としつこく書いてある。
 超強烈な磁場なのだ。なにしろ普通なら磁石にくっつかない水の分子を揺すぶってしまう。水素原子をぐるぐる振動させてしまうくらい強力な磁石。なんともワクワクするではないか。
 その強力な電磁石の鉄芯のかわりに僕が入るのだ。
 近所に砂鉄を蒔いたら、僕の頭のてっぺんで髪の毛が逆立って、磁力線に沿って模様ができそうな感じ。
 検査着に着替えて、前後に動くベッドに仰向けに載せられる。
 うるさいからと空港の滑走路でジェット機を誘導する人がつけているようなヘッドホン型の耳栓をする。
 閉所に入るから耐えられなかったら押して知らせろ、という合図のためのゴムのポンプ玉。(電気のスイッチは金属だから当然入れられない)
 いよいよ、ゆっくりと入っていく。
 装置はワーンと音を立てている。おそらく電源系や配線系の冷却音。それに超伝導を保つ希釈ポンプをサポートするロータリーポンプの音のようなものが混じる。
 耳元では、パルスがカリカリとかガーガーとかスイッチングされているような音。かなり大きな電流がスイッチングされていると思われる。
 目の前でゆっくり動く(ほんとうは自分が乗っている台が動いている)電磁石本体に、中を点検するためのメクラ板が1枚、ネジで止められているけど、もちろん金属のネジではなくて、白いテフロンのような素材のネジだ。
 というわけで、撮影時間は15分ほど。
 その間、自分の身体の中の水の分子が超電導磁石で揺すぶられて温まっているような感じがして、電子レンジの中のネコのような気分。ちょっとIHヒーターの原理とも似てるしね。なんとなく、身体が暖まるような気がするわけだ。
 ピップエレキバンは800ガウスだけど、この種の装置は1T(テスラ)くらいだから、肩こりだってバンバン治りそうな感じがするしね。(ほんとか?)
 耳元では、ガリガリガリとパルスの音がしているから、なんか自分がハードディスクになって初期化されているような感じでもある。(人生も記憶もリセットできる?)
 予約時刻の30分前に来いというから、35分前に行ったら、待ち時間ゼロで、あっというまに終わってしまって、予約時刻の10分前には終了。
 もう終わり?
 ああ、もっとやっていたかったなあ。
 X線とちがって被爆がないというのも気が楽でいい。
 でも、更衣室に置いてきたノートパソコンのハードディスク大丈夫だろうか。(あ、もちろん大丈夫でした)
 大金持ちになったら、自分の家の地下室に1台、MRIの装置が欲しいと思った。