日: 2012年8月3日

Verona でオペラ「カルメン」

 やっと帰ったベネチアで1泊しただけで今日は、列車で、Verona へ。
 午後5時過ぎ、アーチをくぐると世界遺産でもある城塞都市ベローナの旧市街だ。
 古代ローマの円形劇場 Arena di Verona は、いまでも現役の劇場で、そこで毎年夏になると、野外オペラが開催されている。
 収容人員2万人。
 演目は、毎日変わる。
 僕らが今晩見るのは、ビゼーの「カルメン」。
 とりあえず Hotel Bologna にチェックイン。
 アレーナのすぐそばだ。
 オペラが始まるのは日が暮れる午後9時。
 まず、アイスクリームを食べ、しかるのちにスーパー・マーケット PAM で水とビールを買う。
 劇場に入る前に円形劇場が見える広場のレストランで食事を摂る。
 毎日演目が変わるので、アレーナの周囲には、当日の演目では使わないセットが無造作に置かれている。
 トゥーランドットやアイーダなど、つまり、広場にスフィンクスがいたりするわけだ。
 一番安い席は古代ローマ時代のままの石段だから、外では、お尻が痛くならないように敷く座布団が売られていたりする。
 安い席は指定席ではないらしく(石の上に番号をふれないからか)、場所取りのために早くから入口に人が並んでいる。
 一方、アリーナ席の最前部はドレスコードがあって盛装して行く必要があり、町にはローブ・デコルテやタキシードで歩いたりテラスで食事をしたりする人も見かける。
 僕らの席は、石段の上に椅子を設えた、中間の席。
 それでも出演者とオーケストラで演者300人以上の大スペクタクルだから82ユーロとけっこうな値段ではある。
 午後8時半すぎに入場。
 まだ明るい中、日暮れの開演を待つ。
 ステージの脇にバーができていて、最前部の席の人にはスパークリグワインが振る舞われているようだ。
 僕らの席にはビール売りの女の子ならぬ、ペットボトルの水を売るにいちゃんが、ときどき行き来する。(500mlで2ユーロ)
 僕らはホテルで自分のペットボトルに水を詰め替えて出てきている。
 周囲にはドイツ語が目立つ。
 ドイツ人かオーストリア人かスイス人かはよくわからない。
 日が暮れると共に開演。
 タイミングを合わせたように、まん丸の月がステージの後ろから昇ってきた。
 2万人の劇場で行われるオペラは出演者も盛りだくさん、ステージを馬車が走る大規模なもの。
 劇団四季はおろか、ハリウッド映画を凌ぐ、大スペクタクル。
 こうしてオペラは、つねに時代性を失うことなく、娯楽として鍛えられた身体と才能との両方を投じて、その魅力を維持しているのだ。
 文化として現代から孤立して保護される存在ではなく、コンテンポラリーの娯楽として、毎日2万人の観光客を集める巨大な観光資源になるほどの力を持って、観客から受け入れられている。
 おなじように才能と研鑽によって作られている文楽は、オペラや歌舞伎のようにコンテンポラリーな視点で作られているだろうか。
 古典や伝統に胡座をかいて、観客を楽しませるという基本を失っていないだろうか。
 それが橋下大阪市長が投げかけた問題提起なのだと思う。
 全4幕のカルメンは、途中20分ずつの休憩を3回はさんで、午前1時までつづいた。
 周辺のレストランはすべて Aperto dopo opera .
つまり、オペラが終了すると、ふたたび店を開けて、円形劇場から吐き出される人々の胃袋を満たす。