日: 2015年11月25日

「犬に名前をつける日」(監督:山田あかね)

今日見た映画は「犬に名前をつける日」(監督:山田あかね)
 僕は、犬とか猫とかがどっちかというと苦手なのだけど、山田さんは犬をほんとに愛してる。ひとことで言えば、山田さんが愛犬の死をきっかけに、犬と人間の関係を見つめてみようとして、それがそのまま作品になった映画だ。
 僕は犬がそんなに好きじゃない。ある時はかわいいと思うけど、かわいいところだけ「いいとこどり」をするならいいけど、犬の命全般の、嫌な部分、辛い部分を背負いたいとまったく思わないから、「飼う」という行為は僕にはむりなのだ。
 ところが、買い主によっては犬の命を背負う覚悟がないまま、飼ってしまって、放り出してしまうことがある。その他にも人間の都合で、飼ってもらえなくなり、殺処分になる犬がたくさんいる。
 犬は人間の都合で生まれ、人間の都合で命まで断たれる。
 ここまでは、犬好きでない僕でも、頭で理解できるし、頭で怒ることもできる。
 一方で、この映画では、そうした犬の命を救おうと、ものすごいエネルギーを注ぎ込んでいる人たちを描いている。犬の命のために人生が変わってしまった人たちなのだ。
 その人生の注ぎ込み方が、ほんとにびっくりするほど。ほんとにそんなことまで犬の命のために……と思うことがこの映画の中に一杯詰まってる。
 身勝手な人間による殺処分について考えよう、という問題提起だけだったら、(僕にとっては)予定調和になってしまったかもしれないけど、一方の、ある人たちの想像を超えた「動物の命へのコミットメント」について、映画を観なければ僕はとうてい理解できなかったと思う。
 そういう意味で、この映画は、僕にとって、「人生の選択」の問題として、新鮮で驚きのあるものだった。ペットを飼っている人、ペットが好きな人はもちろん、僕のような人間にも、いろいろ考えさせられる映画だ。
(12/4まで、シネマ・ジャック&ベティで上映中)
 もっと早く見るつもりだったけど、ここ3週間、不意に咳き込むことがあるものだから、映画館は遠慮していたのでした。
 シニア料金で見る映画2本目。
(余談)
 山田監督とは、ちょっと奇妙な出会い。
 僕がデビュー前に小学館文庫小説賞の最終候補になったときに、同じく候補になって、その時は山田あかねさんが受賞した。
 もちろん、そこではまったく面識がなかったのだけど、名前だけを覚えていて、後に、どういう経緯だったか、mixi で出会って、高校の演劇の後輩の井坂聡監督とか共通の知り合いがあることがわかったりで、おつきあいが始まった。
 黄金町にレジデンスを始めたばかりの頃は「著者が売る本屋さん」という著者があつまって黄金スタジオで自分の本を売るというイベントに来てもらった。
 山田さんの映画第一作「すべては海になる」ではジャック&ベティの梶原さんに紹介して、上映の時は劇場で監督と僕とでトークをした。(この映画では僕がエキストラで出演していて、エキストラなのにエンドロールに名前が堂々と入ってる)

憂国忌

 三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊で割腹自殺した日。
 昨夜、テレビで三島由紀夫の市ヶ谷の動画を見たら、必死で檄を飛ばしているのに、下にいる方はざわついてまともに聞いていなくて、三島は「おい聞けよ」といらついている。
 いままで見た颯爽としたイメージと違って、すごく間の抜けた感じで、これで割腹自殺したかと思うとちょっと憐れな感じがしてしまった。
 そんな映像があったにもかかわらず、当時の報道はずいぶん好意的だったんだと今になって思う。