月別: 2007年9月

ヨット、のち、F1

 退院後、初めてヨットに復帰……のつもりで、ヨットハーバーまでいったけれど、寒いし(身体が慣れていない)予想以上の雨降り。
 それでも、11時過ぎまではクラブハウスのテラスでだらだらしてみたけれど、昼前に切り上げて帰ってきた。
 昼食は、スパゲッティを茹でてオリーブオイルを絡め、レトルトカレーの一番安いヤツをかけて、少しパルメザンチーズをふって食べる。これ、けっこう好き。少なくともキューピーやアオハタのスパゲッティソースよりは10倍くらいおいしいと思う。
 F1日本グランプリを1時間遅れの「追っかけ再生」で見る。こうすればCMは全部スキップできるので、時間効率がいい。
 ところが、富士スピードウェイも降雨のためレースのペースが遅く、放送時間が延長になる。
 こうなると、録画しながら遅れて見ていると、録画が途中で終わってしまうとアウト! 一瞬ひやりとしたけど、新兵器のソニー「スゴ録」は、自動的に番組延長に対応していて、問題なし。スゴイ、よくできている。
 レースは予想通り荒天で面白い展開。(富士のコースは抜きどころがいろいろあっていいコースだと思う)
 最後の10周。ライコネンが5位から浮上し、すごい2位争いを演じ(結局3位)、ファイナルラップでの6位争いもものすごい展開。レーサーの勝利への執念はすごいの一言。
(「すごい」なんておおよそ小説家の使う言葉じゃないけど、日記だからゴメン、手を抜く)
 小説家も同じで、最後に仕上げにかかるときの執念が勝負なので、腕一本で勝負するプロとしては身が引き締まる思いがした。(というとカッコイイが、つくづく我が身がプロになりきれていないと思った、ということね)
 夕食に必要な玉葱の在庫が切れていたので、近所のローソンに買いに出たついでに、1本100円の週末キャンペーンをやっていたツタヤでDVDを2本、借りてくる。
 玉葱とピーマンを刻んで、「中華名菜」(日本ハム)の肉団子。もやしのXO醤炒め、ジャガイモの味噌汁。

野毛呑み 大崎梢

 物書き仲間の新美健さんと、夕方5時から野毛の「三陽」で飲み始める。
 スタートはここの定番の、瓶ビール、餃子、ネギ鳥、の3点セット。ネギ鳥がうまいんだよね。お通しにニンニクの唐揚げ付き。
 ハモニカ横丁の「華」へ移動したところで、山口芳宏さんが合流。
 話は、小説家の食い扶持、とか、セルフプロモーションとか、そういう生々しい話。
 それとは別に『D列車でいこう』が取り上げられた「NHKBSブックレビュー」の同じ会に逢坂剛さんに紹介されている『サイン会はいかが?―成風堂書店事件メモ』など、一風かわった作風で最近売れている大崎梢さんが、僕の知っている大崎梢さんと同一人物であることがわかる。
 たとえば、かなり前だけどこんなところでもご一緒しています。
(ここにある阿川の「雨が空から降れば」は自分でも好きな作品のひとつ)
 もう一軒、「無頼船」に移動して解散。楽しく呑みました。

文明の衝突

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 新婚の頃、残業でほとんど家にいなかったのに、それでも給料が安くて、立派な家具などもちろん買えず、毎週のように東急ハンズへいって、創意工夫で安いけど自分のテイストに合った家具調度品を作ったり買ったりして手に入れたものだった。
 で、最近ではしばらくの間、あまり東急ハンズのお世話にならなかったのだけれど、たまに行ってみると趣味のいいものもあったりして。
 というわけで、先日、取り置きしてもらったパーティションを受け取りに車で東急ハンズへ。
 あとは、こんな机が欲しいな、なんて。
 執筆の姿勢を保つために椅子の高さを調整すると、床との足の着き方が変わってしまう。なので、椅子を身体にピッタリ合わせてから、机の方の高さや天板の傾きを調整して、完璧な姿勢で執筆ができたらいいんじゃないか、という発想。
 腰を痛めたあとだから、これからはできるだけ体にかけるストレスを少なくしてやろうと。
 仕事場のアーロンチェアでも、居間のソファでも、極端な話、トイレに座った状態でも、こんなテーブルが持ち込めて、しかも高さがピッタリ、なんてちょっといい感じ?(語尾アゲ)
 売り場の見本はガタが来ていて、ちょっと使うに耐えないので、新品ならばがたつきがないのかどうか、調査してもらうことにする。
 あとはついでに、回復中の腰では徒歩では買って帰ることのできない重めのものをセキチュウで仕入れる。米酢などのビン物など。
 あと、スノボガールSちゃんおすすめのリハビリアイテムのフィットネス用ゴムボール(直径55センチ)、高級なのは5000円くらいするんだけど、とりあえずセキチュウで安い方から二番目のやつで1480円也。(いちばん安いのは780円だっためど、いまにも破裂しそうだった)
 夕食の支度で、麻婆豆腐をかき混ぜるために木ヘラを取ろうとして、ステンレスの串に指を指してしまって、夫婦ゲンカ。
 僕が使いやすい道具の収納になっていたのに、入院中に、妻が勝手にしまいかたを変えていて、台所が使いにくくてしょうがない。
 長期休暇からもどったら、自分の机がなくなっていた会社員みたいな気分。
 僕は、道具を使う頻度と作業の流れに合わせて仕舞っているのに、妻は、「きれいな収納」に重きを置いて仕舞うので、料理の作業の流れに、引き出しの中が合わないのだ。文明の衝突。イスラエルとパレスチナみたいなものか。
  次に家を建てることがあったら、妻用の台所と、自分用の台所を、それぞれ作らないとだめだ。ふたつの文明が聖地を共有することはできない。
 現在、それだけの財力は、僕にも妻にもないので、いまのところ、せいぜい妻用のマヨネーズ(味の素)と自分用のマヨネーズ(キューピー)とは、それぞれ用意して使い分けている。そういやシャンプーとリンスも別だ。

やっぱり「パッチギ」

 夕方から神宮前へ。
 ダイヤモンド社の9階で桂吉坊さんの落語を聴く。上方落語を生で聴くのは初めて。
 午後9時すぎ、原宿駅近くでパーティ。
 こうみえても人見知りなので、必死で知っている顔を探す。
(バイオリズム的に社交的なエネルギーがあまりなかったし)
 運よく「ゴールデン街友だち」のCさんを発見。パーティ主催者のTさんと同じ店に出入りしていることは知っていたのだが。
 そこそこのタイミングで新宿へ移動してゴールデン街へ。
 いやあ、何ヶ月ぶりだろう。
 なじみの店でなじみのメンバーがいて、なんとも懐かしい。
 そこでも「パッチギ」の話になり、プロデューサーがなんとCさんの知り合いだったり、実は僕がこの店にいっしょに来たRちゃんは井筒監督のヨメはんだったんだよ、えー、みたいな話になる。店のオーナーは京都の人だし。
 まだ朝まで飲んでいる体力はないので、終電で帰宅。
 なんだか「パッチギ」の風が吹いているようなので、深夜2時頃からビデオで「パッチギ」を見る。
 京都を舞台にしたロミオとジュリエットの話。
 他の映画でいちばん似ているのは「グリース」かな。
「結局、何も変わらない、それでも人間はみんな生きていく」というような話。
 理念よりも現実を泳いでいく哀しみと自然さとたくましさの物語、とでもいうのか。
 映画と小説の作り方の上での決定的なちがいをつくづく感じる。
 あんなに説明しないで物語を運べる映画というのが羨ましくもある。もちろん小説でなければできないこともある。
 この映画でなんだかふっきれた気がする。
 明日一日は雑用があるけれど、やっと頭と身体が小説家にもどってきているのを感じる。

リー・リトナーと映画「パッチギ」

 横浜赤レンガ倉庫まで25分ほど歩く。
 午後8時40分到着。
 Motion Blue Yokohama で、リー・リトナーのライブ。
 ステージ上手(かみて)、ドラマーの後ろの席。目の前2mにドラマーの背中が見える。
 ほとんどすべてインプロビゼーションですごくいい感じの演奏だ。
 ドラマーの後ろにいると、ジャズの演奏の場合、メンバーみんながたびたびドラマーを見る。アドリブの受け渡し、リズムの切り替え、など、アイコンタクトで演奏を続けていくからだ。
 となるとこの位置にいると、まるで自分がステージにいる感じで、演奏者と頻繁に目が合う。
 もともと音楽を聴くとき、クラシックでもジャズでもロックでもいつも自分もいっしょに演奏しているつもりで聴くのだけど、今夜は、特別にそのライブ感が強烈。聞いている音も、ほとんどドラマーが聞いているモニタースピーカーの音だしね。
 しかし、いい演奏を聴くとめちゃんこ疲れる。
 なにしろ、ミュージシャンと同じテンションで、すべてのプレイヤーのすべての音を聞いて、自分がそこに後を重ねるつもりで聴いているわけだから。
 後ろの席には井筒監督の作品『パッチギ』の主演男優・塩谷瞬が座っている。
 ステージのちょうど反対側、下手(しもて)のピアノの後ろには杏里がいる。
 実は、ちょうど日曜日の深夜に『パッチギ』を録画したところだった。井筒作品は見たことがなかったのだけれど、井筒監督の奥さんとは酒の席でいっしょだったことがあって、パッチギ見てねと言われていたのであった。
 ライブでぐったり疲れて、また、徒歩で帰宅。
 歩いていけるところで、リー・リトナーを聴くことができるなんて、ああ、なんてシアワセ。

イノシシを喰らう

 昨夜は、ちょっとくだらない調べ物をしているうちに寝そびれてしまい、やっとベッドに入って起きたのは午後2時。
 3週間の入院生活でせっかく身につけた朝型生活だったのに。
 そこに到達するのにたくさんの入院費だって払ったのに。て、入院は夜型生活矯正が目的だったのか(笑)
 午後いっぱいを自動録画したニュースのチェックなどで過ごす。そうなのだ。我が家では、ソニーの「スゴ録」が稼働し始めて、キーワードを入れておくと、該当する番組を自動的に録画してくれる。なので、NHKの定時ニュースの他、CNNとかABCとかアメリカのニュースをチェック。
 これで、ニュースを見るためだけにスカパーを契約する必要性がかなり減った。(現在、基本料金だけ払ってですべてのチャンネル解約中)
 そのほか、予想外に役立つドキュメンタリーなどを見るチャンスに恵まれる。
 結果的にテレビの視聴時間が少し増えた。もともとニュース以外にあまりテレビを見ないから。
 ただし、この2ヶ月ほど、入力過剰で情報収集に興味がいって、その分だけアウトプット、つまり、執筆の調子がひどく悪い。ここらで意識して、入力を遮断する必要がある。
 さて、夕方のテーマは、猪肉の調理。
 ご飯を炊いて、冷凍してあった油揚げで味噌汁をつくり、キャベツとピーマンのオイスターソース炒めをつくったところで、猪肉のロースの部分を刺身用の柳刃包丁で薄くスライスしていく。
 結局、シンプルに粗挽きブラックペッパーをふって焼いて、レモン果汁と塩とで食べることにした。
 食べてみると思ったほどの臭みはなく、味はコクのある豚肉という感じ。なかなか美味しゅうございました。あとモモ肉があるのだが、そっちのほうが匂いがきついかもしれない。とりあえず冷凍して、それはまた後日。
 
 夜半から近くのツタヤへ行き、CDを1枚返して借りて、午前2時までやっている併設のスターバックスでノートパソコンを開いて仕事。
 まだ腰が本調子ではないので、このスタバの椅子でパソコン仕事は1時間くらいが限度みたいだ。
 執筆マシンの Sharp MURAMASA PC-MM2-5NE の標準バッテリーが弱ってきて、1時間半ほどしか使えなくなっている。昨夜の調べ物というのは、実は、このバッテリーの中味のセルだけを取り替えてくれるサービスについてだったのだ。
 ふだんは3倍容量のバッテリーを使っていて、そちらも弱っているのだけれど、まだ4時間ほどは使える状態なので、当座は間に合っている。(以前は7時間ほど使えていたが、さすがに3年使っていると弱ってくる)
 この標準バッテリー、純正品を買うと15000円ほどするところ、業者に中味だけを替えてもらうと8000円ほどで済む上に、純正品発売後の技術進歩が反映され改良されたセルに交換されるので、性能も上がるらしいのだが。

イノシシはどうやって食うのか

 まだ、ヨットには復帰できない。
 ヨットは海況によってハードさがちがうので、余裕のないぎりぎりでは乗れないし、まだ身体を捻ることができないのが問題。
(乗船中は、進行方向に対して真横を向いて座り、顔だけ進行方向に向けるので、身体を捻る姿勢を続けることになるので、背骨を捻ることが禁忌の状態ではなかなかむずかしい)
 パシフィコで開催中の「横浜ライフデザインフェア2007」へ、歩行訓練を兼ねて。
 いわゆるシニア世代、団塊の世代の退職後に向けたイベントなのだけれど、狙いが絞り込まれていなくてイベントとしてあまり成立していないように感じた。
 そもそも団塊の世代と従来のシニアはライフスタイルがかなりちがう。
 近くでの買い物も含め、万歩計は3000歩だった。
 たったこれだけで、まだかなり疲れる。
 夜、山で射止めたというイノシシの肉が届く。
 さあて、どうやって食えばいいのやら。
 

1回休み

 職人が来て、家の内装のドアを直していった。
 あとは、ほとんど在宅。
 仕事の勘が鈍ってしまっている。まずいな。
 牛乳とパンを買いに近くのコンビニに出かけ、帰りにTSUTAYAでCDを借りてきた。
 双六でいうと「1回休み」みたいな感じのだらけた一日。
 疲れをとるってことも大事だよね。と、自分にいいわけをする。

江戸川乱歩賞授賞パーティ

 午後5時半、有楽町ビックカメラ。
 HDMIケーブル1.5m(3780円)。居間のビデオの配線を変えるため。
 午後6時、帝国ホテル。
 江戸川乱歩賞授賞式&パーティ。
 始まった頃はスーツを着た人が多くて、途中から肩を出したドレスの銀座のおねえさま方が増え、さらにはなんだか職業不詳の人が増えてスーツの人が減る。2時間の間に会場にいる人の構成比が何度も変化する不思議な会である。
 昨年は推理作家協会に入会したて、ということもあって、ほとんどのパーティに参加したのだけれど、今年は、体調もよくなかったこともあり、ちょっと休みがち。
 江戸川乱歩賞パーティだけは、推理作家協会の他のパーティとちがって、会費が無料でしかも帝国ホテル、ということもあり、病み上がりの社会復帰訓練がてら参加。
(ちなみに、その他のパーティは会費1万円で、新橋第一ホテルとか、飯田橋ホテルエドモントなど)
 ひさしぶりに(最近学業が忙しくてあまりいっしょに飲んでいない)菅谷充さんを発見。
 知り合いの編集者がいつもより少なかったりしたこともあって、ローストビーフ、寿司、スモークサーモン、蕎麦、デザート、など、お腹一杯食べたりして。(笑)
(ふつうは、挨拶や名刺交換で忙しくて、あまり食べるヒマがない)
 先日ご馳走になったK書店の某氏に会ったら、「すすんでいますか?」
 K書店の仕事ではなくて、その前の別の出版社向け長編のこと。それらが終わったら注文をくれる含みの質問で、たいへんありがたいのだけれど、まだ自分の創作ペースがちゃんと確立していないので、返事がしにくい。(ああ、まだプロになりきれていないなあ)
 コルセットをして2時間立っていたらさすがに疲れて会場の後方のテーブルに座って雑談をしていたら、近くにいたK文社のU氏いわく「サントリーミステリー大賞トリオですね」。
 そうなのだ。高嶋哲夫(サントリーミステリー大賞)、新井政彦(日本ミステリー大賞新人賞)、とわたくし阿川大樹は、第16回サントリーミステリー大賞の最終選考に残ったときの同期(笑)。
 ひとつの賞の候補者3人が全員、のちにデビューして、この種のパーティで顔を揃える、というのはけっこう珍しいのだけど、ときどきこうした同窓会(同期会)のようなことになるわけだ。
 最初に「大賞」になった高嶋さんがもちろんいちばん実績を上げている。
 ちょうど話していたときに、高嶋さんの『M8』の文庫増刷(3刷)のニュースが入る。
 というわけで、「サンミストリオ」は有楽町の街に出て、某洋風居酒屋へ移動。
 午後10時くらいまで、いろいろな話。この3人が揃うとあまり景気のいい話にならないことが多いのだけれど、「3刷決定」というおめでたいことがあったので、ここでの二次会は高嶋哲夫さんの奢りになった。
 ごちそうさまでした。
「これからは、増刷になった人の奢り、というルールにしましょうか」
 などと、けっこう本気に言い合ってわかれる。
 ちなみに、帝国ホテルの会場で、吉田伸子さんが、僕の顔を覚えてくれていたのが、けっこううれしかったな。

今日も新記録!

 昼過ぎに家を出て、打合せ、中華の夕食。
 9時間の外出。退院後最長外出時間。本日も進歩。
 思えば子供の頃って、自分の進歩をいつも自覚していて、なんでも楽しかったような気がする。大人になると、停滞した能力とか沈滞した日常とか、そういうのを感じる機会が増えてくる。
 停滞を安定といいかえて、それをガマンするのが人生だったり仕事の中心部分になってしまったり。
 辛い時期がなかったわけじゃないけど、自分は面白い仕事ばっかりやっていたような気がするし、今になって日々進歩する肉体を実感したり、人生って楽しいよね。
 新しいことを始めると、それが未経験だからこそ、進歩のスピードが早くて毎日が楽しいわけだ。
 人生、毎日、伸び盛り!
 楽しくないのなら、楽しく生きるために、今の人生にこだわらずに、いつだって新しい人生に踏み出していけばいいじゃないか、というのが『覇権の標的』『D列車でいこう』にある基本的な考え方。