CDが売れなくなったわけ

 ずっとDISCASというツタヤの通販レンタルのシステムを使っていたのだけど、イタリアにいる間は借りられないので、4月に解約していた。
 3年ぶりに実店舗でのレンタル会員になる。
 4枚1000円でCDを借りて仕事場へ。
 Bill Evans, Norah Jones それに Melody Gardot を2枚。
 CDが売れなくなっているそうだ。
 音楽業界はそれを違法ダウンロードのせいにしていたりするのだけど、僕はちがうと思う。
 いま、僕のパソコンには12000曲近くの音楽が入っている。
 もちろん違法にダウンロードしたものじゃなくて、買ったり有料でレンタルしたり、すべてきちんと著作権料を支払っている。
 24時間かけっぱなしで、全部聞くのに37日かかる、とパソコンの画面に表示が出ている。
 僕の残りの人生はせいぜい30年くらいしかなく、1日は24時間しかないし、音楽ばかり聴いていられないから、新しく買わなくても十分なだけの音楽コレクションをもっている。
 レコードやCDで聞いていた頃は、コレクションにもっている曲を覚えていられないから、古くからある曲は一部を除いてあまり聴かれなくなったものだ。
 そこで新しいアーティストや新しい曲が耳に入ると、新たにCDを買うことになる。
 ところがパソコンの中にあると、古いものも新しいものも、すべてが同列で目に入ってくる。シャッフル機能で機械が自動的に忘れていた古い曲をかけてきたりする。
 iPod や iTunes のおかげで古いものを聞く機会が多くなったのだ。
 その分だけ、新しい曲を聴く機会が減り、新しいものを買うモチベーションが以前よりも低くなっている。
 かつては新しいレコードを買うと、しばらくはそればかり聞いたものだけど、いまは、新しいものを買っても、ライブラリーの12000曲に、静かに加わるだけで、以前ほど新しいものばかり聴くというわけでもない。
 つまり、CDが売れないのは、違法ダウンロードのせいじゃなくて、パソコンや iPod にライブラリーが全部入り、それを持ち歩いて聞く機会が増えたので、音楽を聴く時間が限られている中で新しいものの必要性が減ったからだ。
 ようするに新しい効き方のスタイルのなかで、音楽業界が昔売った音楽自体が、新しい音楽を売る邪魔をしているというわけだ。
 1日2時間音楽を聴くとすると、ライブラリのすべてを聴くのに1年かかるから、この先、平均すると生きている間にもっている曲をせいぜい30回くらいしか聴くことができない。
 かつてレコードの頃はコレクションも少なかったから、買ったらあっというまに30回くらいは聴いたものだけどね。
 まあ、それでも新しいものを買うことは買うのだけどね。