東京工芸大学で特別講義

 特別講義のため、本厚木にある東京工芸大学へ。
 読んでくれた先生と駅前でランチを一緒に摂るのが最初の予定だったけど、準備に朝までかかってしまったので、昼食はキャンセル。
 午後2時過ぎ、本厚木からタクシーで大学キャンパスに向かうタクシーで、言葉遣いもきちんとしていて、感じのいい運転手さんに当たった。
 さりげない会話から、どのような頻度で大学に行くのかを確かめ、「お帰りは何時ごろでしょう」と。
 その時刻に門外で待つので帰りも利用してくれないか、と営業。
 そうしたことも含めて、きちんとした仕事をしていることに感動する。
 午後3時から、途中10分の休憩を含めて、90分を2コマの授業をする。
 講義のタイトルは「小説家の仕事と、その工学的アプローチ」。
 前半1コマ目は、月曜に六本木ヒルズで話した内容を学生向けにアレンジしたもの。
 2コマ目は、「小説を書く」というプロセスに於ける道具立てと、心と体のコンディショニングについて、エンジニアリングの視点からのアプローチを語る。
 終了後は、往路と同じ運転手さんのタクシーで本厚木駅へ戻る。
 雑談しながらノウハウを聴くと、毎日さまざまなデータをとって作ったというグラフを見せてくれた。
 いろいろな場所での待ち時間の最大値や平均値、時間あたりの収入、などがわかりやすくなっている。
 そのデータから、法律で決まっている休憩時間をどこでとるか、どの時間にどこで待つか、などを決めているのだという。
 僕の感覚からすると、商売をするのなら当たり前のことではあるけれど、実際にこれだけのことをしているタクシー運転手に巡り会うのは初めてのことだ。
 きちんと仕事をしている人をみると、こちらまでうれしくなる。
 運転も応対も、歩行者に対する態度も、とても気持ちがいいものだった。