先日来、肋骨骨折で不自由かつ痛い思いをしている。
咳や笑いが激痛をもたらすので一番辛い。
痰が喉にからんで苦しいとき、ふつうなら大きく咳をして喉から剥離させたりするわけだけれど、そんなことをしたら床に倒れ込んでのたうち回ってしばらく動けなくなるだろう。
であるけれど、その不自由さも、痛さも、不自由さの中で細かな工夫でわずかな自由を獲得していく創意工夫も、すべてが新鮮で楽しくもある。
ようするに、すべては小説を書くのに必ず役に立つ。芸の肥やしなのだ。
小説家というのは得な職業だ。
某有名作家が「拉致されてみたい」といって顰蹙を買ったということがあったらしいけど、その気持ちはとてもよくわかる。
僕だって、(あくまで最後に助かるという条件つきだけど)乗っている飛行機がハイジャックされたり、タリバンに誘拐されたり、そんなことを心の奥底で望んでいたりする。
こう公言することで、けしからんという人がいるかもしれない。
しかし、実際、そう思っているという真実は動かすことができない。
公言しなくても、僕はそう思っているようなけしからん人間なので、どうせなら公言してしまう。
そんなわけで、平穏な生活よりもピンチに遭遇することを歓迎している。
ちょうどいま、横浜みなとみらいはAPECのおかげで戒厳令の町になっていて、はなはだ迷惑かつ不便なのだけれど、やはり、そういう非日常は大好きなのである。
子供の頃、台風が来るとワクワクしたあなた!
もしかしたら、あなたは小説家に向いているかもしれませんよ。