新製品発表: KINGJIM pomera DM20 ポメラ

 午後一番、赤坂ガーデンシティで、キングジム「ポメラ新製品発表会」。
 初代機ポメラDM10は、当初予定の年間3万台に対して、9万台売れたという。
 ライターや小説家などの同業者にも、pomera を使っている人はかなりいる。もちろん、我が家にも一台。
 さて、その pomera だが、まず、スペックから見た感想を書いておく。
 12月11日発売の新型 pomera DM20 は、旧型の不満をほぼ全面的に解消している。
「ネットに繋げるようにしろ」「バックライト液晶にしろ」という人もいただろうけど、そういう電池食いの仕様は無視して、電池で長時間動くテキスト専用マシン、というコンセプトを守って、正常進化したことをまず喜びたい。
 技術的トレードオフを考えない、なんでも欲しがる「お客様の声」を上手に無視するのは、実は企業にとってはけっこう難しいことなのだ。
 おおぜいの人の意見を聞くと、スペックはどんどん大きくなり、その結果、基本機能よりもカタログの比較表にたくさん丸がつくことが優先される、という本末転倒がよく起こる。
 そうならない「ブレないコンセプト」が立派だ。
 1ファイル8000文字だった制限が28000文字まで拡張され、これは原稿用紙で70枚以上に相当する。
 実用上、ほぼ無制限といっていい。
 職業小説家は1冊の本として、最終的にこの10倍くらいの長さの文章を書くわけだけれど、全体を1つのファイルにして書き継いでいくことはしない。阿川の場合、原稿用紙換算で50-60枚よりも大きなファイルにはしない。
 28000文字だと、400字の70倍だけど、小説は改行が多いので、原稿用紙換算では80枚以上になると思われ、短編ならば、多くの場合、この範囲で一気に書けてしまう。
 一見地味だけれど、フォルダが使えるようになったのは大きい。
 書くためには、資料もあるし、分割して書いていく本文をまとめて仕舞っておくフォルダがあるとないとでは大違い。
 ましてや、連載と書き下ろし、など、複数の小説を同時期に書き継いでいくとすると、フォルダは必須。
 しかし、なにより重要なのは、ポメラでフォルダが使えると、「パソコンで書いて、ポメラへ持ち出して書き継いで、またパソコンにもどす」という一連の執筆の流れで、フォルダ構造をそのままコピーして持ち出し、また、そのまま書き戻しができるということ。
 フォルダが使えないと、これをやるにはパソコン側でもフォルダを使わないようにしなければならない。従来の機種では、その意味で作業中のファイルの持ち出しが、意外に面倒だった。
 結局、面倒のないノートPCを持って出て行く、ということが多かった。
 フォルダをサポートすることによって、利便性、可搬性が確保されたといえる。
 これはサブのツールではなく、プロの執筆システムの本流に「普通に」組み込む事のできる道具になったということだ。
 その他、細かなところで、初代機で「いまひとつ」だったところが、ことごとく改善されている。
 地味だけど、確実に「本当に必要としている人」に報いる進化だ。
 出先での、メールやウエブアクセスは、相当程度に携帯で済む。
 欲しいのはまず最初に文章を書くためのマシンだ。
 PCの他に長時間使える執筆マシンがあれば、パソコンを持って出る必要はぐっと減らせる。
 PCを持って出て、それでネットに使う機会は、携帯があればそれほど多くない。
 なぜなら、wi-fi をオンにするとバッテリーの持続時間が短くなるし、携帯電話をつないでPCでインターネットをつかうと、通信費が高くなる。
 かけがえのない執筆マシンのバッテリーをメールやウエブブラウジングで消費したくない。
 電池がもったいないのだ。
 外出先ではほとんど携帯で用が足りるし、足らせたい。
 もし iPhone を持っている人なら、なおさらそれで済んでしまうだろう。
 実際、外へ出る時間が長いときは、電車の中や、あいた時間に仕事をしたいがために、ノートパソコンを持って出ることがほとんどなのだけれど、必要十分に進化した新型 pomera DM20 があれば、PCを持って出る機会を減らすことができるだろう。
 逆に、長時間にわたって、外にいるとわかっているときには、PCのバッテリの心配から、pomera 「も」持って出る、という機会が増えそうだ。
 発表会の会場からサンプル機を持ち帰ることができたので、実際の使い勝手について、気づいたことについては、あらためて、また書きたいと思う。
 いや、ほんとうに「正常進化」してくれてほっとしましたよ。
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