朝型生活。
病人らしく家に引きこもって資料本読み。
『PR会社の時代』(矢島尚/東洋経済新報社)
『ハリウッド女優になったOL奮闘記』(中村佐恵美/文藝春秋)
午前1時半、就寝。
長編のアイデアを転がしているだけで、ちっとも実際の原稿を書いてはいなかった最近の阿川大樹。
リハビリを兼ねて、〆切よりも早く、連載のエッセイを書き上げて送付。
久しぶりにお金になる原稿を書きました。(いいんかそれで)
まあ、小説の場合、実際に文字を書くという作業をするのは、製作工程のごくごく一部にすぎないわけです。
あとは、病人らしく、家で静かに。
歩くとすぐに足が痛くなるので、それに耐えるために全身の筋肉がこわばるのか、ひどく疲れるのです。
なので、昼寝をしたり。
病気というのは、身体が休息を要求しているのだと考えると、納得して受け入れることができるものです。
(と、本日は「ですます調」の気分でした)
深慮遠謀。もしかして花火大会が雨天順延になるかもしれないと期待して、マンションのパーティールームを予約してあった。もちろん花火大会当日も申し込んだが、だれでも同じことを考えるから抽選ではずれた。
「もしかしたら花火が見えるかもしれないパーティ」と銘打ってフットサル仲間に声をかけたら、平日にもかかわらず4人が来てくれて、「やっぱり花火は見られなかったホームパーティ」と名を変えて開催。
二次会は我が家で。
仲間との家飲みも楽しいなあ。
もっと頻繁にできるといいんだけど、僕もカミさんも家で仕事をしていて、いつもいっぱいいっぱいで、余裕がない。
「本日もいい場所がとれています。よかったらどうぞ」
朝、寝ようとしたらメールが来た。臨港パークの花火大会で場所取りをしている宴会好きの古い友だち。会社を休んで花火にかけている。もう若くはないのに。(笑)
かくいう我が家だって、以前は、17階から真正面に見る花火のためにきわめて高額の家賃を払っていたので、人のことは言えない。
昨夕、自転車で通りかかったら、花火まで24時間以上あるというのに、すでに場所取りが始まっていたのは知っていた。そこに彼が加わっているわけだ。
一眠りして、午後、結局、せっかく誘ってもらったのだけれど、そっちへ参加するのは断念する。
身体に自信がないので、長時間離脱できない場所に出て行く勇気がもてないのだ。とりわけ、花火終了後、人混みの中を遅いペースで歩くのはかなり苦痛を伴うと思われ、かといって、しゃがみ込むと危険だし。
代わりに、臨港パーク最前列には劣るものの、確実に花火が見えて混んでいない近所の某所(内緒です)へ、キャンプ用のディレクターチェアを担いで、杖をつきながら出陣。
ヘッドフォンで音楽を聴きながら、椅子に座ってゆったりと日暮れを待ち、「金麦」を飲みながら花火を満喫。
夕食後は、京都の病院に頼んで取り寄せてもらった『臨床整形外科』(整形外科の専門雑誌)の記事のコピーを読んだり、ネット上で脊柱管狭窄症のことを調べたり。(かなり詳しく手術の方法と予後のことなどが記述されている)
8日に検査結果を聞くための予習。
症状からすると、脊柱管狭窄症(lumbar spinal canal stennosis: LCS)にほぼまちがいないのだが、同じ症状をもつ慢性動脈閉塞症(peripheral arterial disease:PAD)でない、または、合併していない、ことを確認しないと治療方法を決めることができない。現在、そのための検査段階にいる。
(検査をしている間に、症状はどんどん悪化しているという、この医療システムの欠陥については、すぐには変えられないのでいたしかたない)
年配の人とちがって、こっちは十一年前に会社員を辞めて専念したおかげでせっかく小説家として遅いデビューをして走り始めたばかりなので、身体のことでもたもたしていられない。早いところ直さないと、残りの小説家人生は短いのだ。
きちんとした知識で医者とやりとりができなくては話にならない。
臨床データを見る限り、プロスタグランジンE1誘導体製剤(PGE1)による保存療法はあまり効果が期待できない。
このことがわかっただけでも、「とにかくPGE1をやってようすを見ましょう」なんてことを、もし医者が言ったとしても即座に却下できるので、少なくとも8週間は時間が節約できたぞ。
銀行をまわる必要があったので、本日は自転車で移動。
用事を済ませて帰ってからプールに行こうと思ったけど、自転車を降りてからランドマークタワーの中をビルの5階のスポーツクラブまで行く途中の痛さを思い出すとなんだかイヤになって、もういちど自転車にまたがって、みなとみらい周辺をポタリング。
いまのところは自転車ならまったく問題なし。
ただし痛みを和らげるために筋弛緩剤を飲んでいるので、力が入らず、一気に踏み込むことはできない。
自転車漕ぐのは全然平気なのに、家の中で歩くだけですぐ足が攣りそうになる。これは虚血性の痙攣か、単に神経の問題か、不明。
適度に汗をかいたので、いつもはシャワーのところお風呂。
温めるとよくなるかと期待したが、バスタオルで身体を拭いているだけで左足の後ろがつつっとなるなあ。
夕方から、推理作家協会の総会と懇親会があったのだけれど、体調不十分のため、そちらはおやすみ。新しい仕事の受注活動よりも、すでに注文を受けている3作をさっさと仕上げなくてはならないし、そのためにも病気を何とかしていかないと。
近ごろ、さながら「闘病日記」の様相を呈していますが、いつの時点で何ができて何ができないのか、記録がてら病気自慢を書いているので、さらりと読み流してください、みなさま。
歩いてスーパーに行けないので自転車を利用しているが、自転車だと提げて帰ることのできる量が背中のバッグの大きさで制限されてしまう。
というわけで、本日は、車で買い物ツアー。
乾物系問屋で、「金麦」のケース買い、他、いろいろ。
コットンマムで野菜と果物、などなど。
夜はリハビリのためプールでウォーキング。
クィーンズスクエアまで歩いて数分がつらいので、自転車。
ところがそこからランドマーク5Fのスポーツクラブまでさらに5分弱かかる。
水中では、前屈みになって歩くので、痛みはあまりない。
50分ほど歩いて、途中100mほど泳いで終了。
前日の起きた時間が午後4時で、あまりにも社会生活上不便である、ということで、時間帯をシフトするために、前夜からしばらく起きていることにした。まあ、実際、全然、眠くないし。
というわけで、午前8時半過ぎ、投票所へ向かう。
そこそこ歩くので、妻が使っていた杖を借りていく。半ズボンにアロハシャツで杖をついているのは妙な光景だろうか。
前屈みだと楽なのだが、杖なしで前屈みの姿勢でいると、周囲から見て異常な感じがする。杖をついていれば、見ている人が「ああ、この人は身体のどこかが悪いのだ」と納得できる。相互にアカウンタブルである、というのは、快適な社会生活にとって重要な要素だ。あかの他人同士の関係で大事なことは、本当にわかりあうことではなく、お互いにわかったような気がして安心できること。
スタスタ歩く方が楽なんだけど、投票所へアプローチするエレベータでご近所の見知らぬマダムに話しかけられ、四方山話をしながらゆっくり歩くハメになり、やはり痛くなって、しゃがむ。
杖をついて、スタスタ早歩きするのも、アカウンタビリティに問題があるんだよなあ。
世間の人のステレオタイプ(足の悪い人は歩けてもゆっくり)というのからはずれて、早く歩く方が楽で、むしろ走ることなら問題なく、ゆっくり歩いたり立っているだけだと最悪、という病気は、なかなか暮らしにくいものだ。
車椅子を借りたいと思うのだが、途中に段差があったりしたとき、自分で車椅子から降りて、車椅子を持ち上げて降ろし、また、車椅子に座って移動を続ける車椅子利用者に、世間が理解を示すかどうか、というのがどうしてもひっかかる。世間は障害者に弱々しさを期待するので。
投票所の中には椅子がないので、ガマンしながら投票を済ませ、外へ出てからまたひとやすみ。
とまあ、足が悪いだけで、いままでわからなかったことがいろいろ見えてきたり、想像の及ばなかったことを考えたり、なかなかお得な感じではある。
ただ、運動不足で体調が悪くなっているのが問題だ。
本日、27日、いよいよ待ちに待ったMRI検査の日だ。
MRIとは Magnetic Resonance Imaging の略。
ちょいと物理学をかじった人間にとって、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance)を用いて、自分の断面を見るなんて、なんともはやワクワクするようなことなのだ。
「核磁気共鳴コンピュータ画像診断装置」だから、もともとは、NMR-CTと呼ばれていた。ところが「核」というのが原子力を思い起こさせて被爆がないのに放射能を浴びると誤解されそうなので、MRIと呼ぶようになったのだそうだ。ここでは放射能を出すような核反応は起こしていない。水素の原子核を共鳴させて水の分子の並び方を少しけ変えているだけ。
装置の原理は、巨大な磁石の輪の中心に人間を入れる。でもってその磁力で身体の中の水素原子(水)を揺すぶると、その動き具合がコンピュータで映像化されてくるというわけだ。
その巨大な磁石というのが超伝導マグネット。
そうあの物理少年憧れの「超伝導」だ。その超伝導を起こすための仕掛けにはヘリウム希釈冷却が用いられている。あの「ヘリウム」だぜ。(もっとも最近は、口から吸い込んで喋ると自分の声がアヒルの声になるオモチャとしてヘリウムガスが売られていて、全然、ありがたみが下がっているんだけどさ)
昔、テレビでみた「タイムトンネル」のような装置。
更衣室にはヘアピンだろうとブラジャーのホックだろうと、「金属は持ち込むな」としつこく書いてある。
超強烈な磁場なのだ。なにしろ普通なら磁石にくっつかない水の分子を揺すぶってしまう。水素原子をぐるぐる振動させてしまうくらい強力な磁石。なんともワクワクするではないか。
その強力な電磁石の鉄芯のかわりに僕が入るのだ。
近所に砂鉄を蒔いたら、僕の頭のてっぺんで髪の毛が逆立って、磁力線に沿って模様ができそうな感じ。
検査着に着替えて、前後に動くベッドに仰向けに載せられる。
うるさいからと空港の滑走路でジェット機を誘導する人がつけているようなヘッドホン型の耳栓をする。
閉所に入るから耐えられなかったら押して知らせろ、という合図のためのゴムのポンプ玉。(電気のスイッチは金属だから当然入れられない)
いよいよ、ゆっくりと入っていく。
装置はワーンと音を立てている。おそらく電源系や配線系の冷却音。それに超伝導を保つ希釈ポンプをサポートするロータリーポンプの音のようなものが混じる。
耳元では、パルスがカリカリとかガーガーとかスイッチングされているような音。かなり大きな電流がスイッチングされていると思われる。
目の前でゆっくり動く(ほんとうは自分が乗っている台が動いている)電磁石本体に、中を点検するためのメクラ板が1枚、ネジで止められているけど、もちろん金属のネジではなくて、白いテフロンのような素材のネジだ。
というわけで、撮影時間は15分ほど。
その間、自分の身体の中の水の分子が超電導磁石で揺すぶられて温まっているような感じがして、電子レンジの中のネコのような気分。ちょっとIHヒーターの原理とも似てるしね。なんとなく、身体が暖まるような気がするわけだ。
ピップエレキバンは800ガウスだけど、この種の装置は1T(テスラ)くらいだから、肩こりだってバンバン治りそうな感じがするしね。(ほんとか?)
耳元では、ガリガリガリとパルスの音がしているから、なんか自分がハードディスクになって初期化されているような感じでもある。(人生も記憶もリセットできる?)
予約時刻の30分前に来いというから、35分前に行ったら、待ち時間ゼロで、あっというまに終わってしまって、予約時刻の10分前には終了。
もう終わり?
ああ、もっとやっていたかったなあ。
X線とちがって被爆がないというのも気が楽でいい。
でも、更衣室に置いてきたノートパソコンのハードディスク大丈夫だろうか。(あ、もちろん大丈夫でした)
大金持ちになったら、自分の家の地下室に1台、MRIの装置が欲しいと思った。

すぐ近くに TSUTAYA と Starbucks Coffee が開店した。
100円割引券の10枚綴りをもらったので、さっそくCDを1枚だけ借りてみる。
1回につき割引券1枚しか使えないので、1回にCDも1枚しか借りないようにする。
そうすれば当日返却270円が170円になるというわけだ。
借りたのは Michel Camilo & Tomatito のアルバム “Spain” 。 ピアノとフラメンコギターの競演するラテンジャズだけれど、なかなかいいです、このアルバム。
午前2時までオープンしているはずなので午後11時過ぎに返却にいったら、まだプレオープンなので、8時に閉店だった。そういうのは貸すときにちゃんと言ってくれ。宣伝のチラシにはそうは書いてなかったぞ。こっちは痛い足を引きずってわざわざ行っているんだから。
CDは返却ポストに返却できたけど、2時間ほどスターバックスで原稿を書こうと思っていたのに、できなかった。
足が悪いので、近くまで来てもらって、友人と食事。
心安らかでいい時間。
新しい小説のブレインストーミングにも少しつきあってもらったり。
