日: 2009年3月30日

黄金町の遅い午後

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 いい天気だ。
 日が暮れる前に太陽に当たりたくなって自転車で外に出る。
 行くあてがないときは黄金町。
 4月半ばからの仕事場までの通勤路を探る、という名目。(笑)
 新しいルートを探しながらゆっくり漕いで少し遠回りもして20分ほどでオフィスになる予定のスタジオの前に到着。
 阿川大樹ストーリースタジオ(仮称)
 建物の周りをぐるりと一周して、入居予定の施設にあるカフェ「視聴室その2」に入る。
 週末の宵にはライブをやったりする店だ。
 この文章もいま pomera で書いている。
 入居者は多少入れ替わることになっていると思うけれど、たぶん、これが平均的な月曜の遅い午後の空気なのだろう、なんて思いながら、自分がここで仕事をする一日をシミュレーションしてみる。
 京浜急行の高架下だから、時折、電車が通るとガタガタゴトゴトと音と振動がする。
 いつもほとんど客のいない店だけど、僕以外にもうひとり、芸術家風の人がいる。もしかしたら、同じプロジェクトの別の入居者かもしれない。店の人にいろいろ根ほり葉ほり聞いているし。
 店のBGMはちょっと大きいかな。
 R&Bというよりはソウルミュージックと呼ぶべきナンバーがかかっている。テイストとしては心地よい。日本語の歌詞の音楽を流されると、気になって集中できない。
 時折、アトリエに出入りする人が通る。
 僕のスタジオは同じ建物の店からは一番遠い位置。仕切はあるけど天井は吹き抜けでつながっているから、当然、音は聞こえるだろう。自分の音も漏れるからおたがいさま、かな。
 もし、うちで掻き消すように別の音を出したら、間にある部屋の人はたまったもんじゃないだろう。(笑)
 なんとなく人がいるような閑散としているような、ゆるゆるな空気は思った通りだ。
 人がいるなかの孤独。
 それが僕が望んでいる執筆環境なんだ。満たされたり、人と共に幸福を共有して満ち足りてしまうと書けない。少しでも不幸が心を占めていないといけない。
 18日に切った指は、ほぼ痛みはなくなって、内側から肉が形成されつつある。一番外側の皮はどうやらつながり損なったらしく、切り口から少しビラビラとなっている。
 指に絆創膏を巻いていると、微妙に距離間が違って、キーボードでミスタッチが出る。
 日が陰らないうちにまた少し走ろうか。
 そう思って、会計をする。
「さっき使っていらしたのはコンピュータですか?」
 店の人がいう。 pomera のことだ。
 ひとしきり説明して、せっかくだからと4月からここを仕事場にするのだというと、何をしているのかと聞かれ、小説家だというと「音、大丈夫ですかね」と訊かれた。
 BGMのことだ。なんだか、本心から気にかけているようだ。すぐにそこに気がまわる人なら、ご近所さんとしてうまくやっていけるような気がした。
 横浜駅西口まで漕いで、ヨドバシカメラでケーブルを買い、東急ハンズで小物を買う。
 ファニチュアを見たら、それほど高くなくて使いやすそうでカッコいいデスクを見つけた。
 もっていたカメラで写真を撮っておく。
 夕食後は朝になるまでゲラのチェックだ。
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手前の四角い窓の中が入居予定のスタジオ
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もうじき「大岡川桜まつり」が始まる
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窓の外には道を挟んで大岡川
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「試聴室その2」から川と反対側を見ると簡易旅館が見える
頭上は京浜急行の線路だ