新宿花園神社の三の酉。
いつもの屋台で焼き物を突っつきながら燗酒を飲んで下地ができたところで、トイレをすませて「見せ物小屋」。
お代は見てのお帰り800円。
入ると、坊主頭に「せんとくん」みたいに鹿の角を生やした男性が、いろいろな芸をしている。
手品だったり、火のついた蝋燭を口に入れたり、細いチェーンを鼻の穴から入れて口から出して、その先にバケツをぶら下げたり。
むかし土居まさるのいテレビジョッキーで白いギターをもらうためにシロウトがやっていた、ちょっとイタイ芸である。
何かひとつやるたびに左から右へ「詰めてください」と客を動かす。
入口から出口への一方通行を促すわけだ。
「ちゃんと20分に一回は蛇女必ず出ますから、騙されたと怒らないでくださいね」
いうまでもなく、ここのハイライトは生きた蛇を食べる「蛇女」。
それの間をつなぐのが、「珍しくて古い芸」をする男性芸人「珍古(ちんこ)くん」
人体の縦切り標本が出てきたのも、たしかに珍しくて古い。
いよいよ、蛇女「小雪さん」の登場。
山口小夜子みたいなおかっぱ頭。赤い着物。年齢は28歳(後の調査による)。
「こういうところはだいたい家族でやっているんですが、小雪さん、家族じゃなくて若い人が入ってくれました。小雪さんがやめたら、この見せ物小屋はもうなくなってしまうんです」と珍古くんのMCが入る。
たしかに庶民的な伝統文化(?)だよ、無くなって欲しくはない、と思わせる。
小雪さん、まず、手始めにロウソクを使って前に火を噴く芸。ゴジラみたいなもん。
(僕の知り合いにもこの芸をやる人います)
で、いよいよ蛇を食べるのだけど、小振りのアオダイショウ。
「すみません、これ一匹5000円もするんで、さっき頭を食べてしまったんですが、未だ動いているやつでやらせてください」
と珍古くんがいう。
貧乏くさいのもまあこの小屋の個性である。(笑)
たしかに、本物のようではあり、小雪さんは、それを頭の方から食べる。
細い骨が砕ける音がするところが地味目のハイライト。
小雪さんは、その間も、ずっと表情を変えない。
惚れた女の職業が花園神社の蛇女だったら切ないよな、なんて気がする。全体に漂っているイタイ空気がなんともいえず場末のストリップみたいな感じで、珍古くんはいわばストリップ小屋でコントをやっているビートたけしといった役どころなのである。
小雪さんはひっこみ「河童のミイラ」が見せられたところで、出口に近づく。出口に年配の女性が二人いて、木戸銭800円を払って外へ出た。
祭のあいだじゅう、珍古くんは1時間に3回、鼻の穴にチェーンを通し、小雪さんは蛇の骨をこりこりと砕きながら食べ続けるのだ。
花園神社の酉の市。三の酉に再出陣。
花園神社の三の酉といえば寒いに決まっている。縁日を見て回ってお参りするのではなく、ここのお酉さまは、「屋台で酒を飲む」のが楽しみ方。つまり、冬空の下、野外で呑むわけなのだ。
が、本日、さいわい暖かい夜ではないか。
楽しみ方のコツは、まず先に「お清め」つまりお参りは後回しにして先に呑むこと。でないと遅くなるほど込んで席が無くなる。(笑)
みんなそれぞれ行く店が決まっている。店の名前は知らないが、場所は決まっているのである。
というわけで、お気に入りの店でお清め開始だ。(笑)
海老やアユなどを焼いている。でも、焼き方がいい加減でしかも値段は結構高い。ちなみに、この海老1200円。
なので、こういうのは見て楽しむだけで、厚揚げとかエリンギとか薩摩揚げとか、そういうのを食べながら呑む。
ここの燗酒は200mlのカップ酒をそのまま温めているので、こちらは良心的だ。(ふつうの飲み屋は清酒一合といいつつ、肉厚で小振りなとっくりに7酌も入っているかいないかだったりするし)
場所が場所だから、そうそう長居はできない。
体が温まったところで、いよいよお参り。
いつも、お願いすることは「それぞれの人が自分らしく生きられますように」。
ちょっと手抜きだけれど、結局、人生はそれに尽きる。
photos with W61CA
二日続けてプール。
昨日より明らかに楽。体は正直だ。
ただし、疲れは残っているので控えめに。
空いていて自分のペースで泳げたので、200m一本。
夕方から新宿へ出かける。
とりあえず駅構内(ルミネエスト)の「ベルク」でビール。
この店、安くて上質のサービスを提供し、雰囲気からして新宿文化の薫り高いところなのだけど、オーナーが変わったルミネに立ち退きを迫られている。立ち退き反対の署名はどんどん集まる。社会的運動にまで発展しつつある。
新宿でベルクに立ち退けというのは、銀座でいえば鳩居堂や三越やソニービルや和光、大阪でいえば通天閣、ニューヨークでいえば自由の女神、浅草でいえば雷門や神谷バー、同じ新宿で他の例を挙げれば紀伊國屋本店に立ち退けといっているようなもの。
ようするに文化の破壊だ。
ルミネエストは、ファッションビルに飲食店はいらないという。「もっとお洒落にしたい」ということなのだろうが、ルミネに入っている「洋品店」たちよりも、「ベルク」のほうがずっと粋だしファッショナブルだ。
金太郎飴のようにどこもかわらない洋服屋を集めただけのビルよりも、ベルクがあるだけで魅力的な場所になることがわからないらしい。
来年早々、新宿を舞台にした長編を発表する予定の阿川大樹は誇りをもって、そして、新宿への最大の愛をもって、「ベルク」を応援します。
ベルクを守る署名は こちら。