日: 2007年8月27日

瘋癲入院日記(1)

8月27日
 待ちに待った入院。
 午後1時20分過ぎ、入退院受付。預託金5万円を会計に払って9階の病棟
へ。
 案内された病室からは、パシフィコ、インターコンチネンタルホテル、ベイ
ブリッジ、風力発電の風車が見える。iRiver T10 のFMラジオもよくはいる。
 室温27.4度。携帯オーディオで India Arie なんか聞いていると、天王
洲汐留あたりの高層マンションにいるような感じで、すごく豊かな気分になる。
 一方で、全員お仕着せの寝間着(1日420円)になるので、廊下を歩いて
いる人がみな同じ服装(笑)をしているわけで、囚人服みたいだ。右手首に黄
色い認識票のバンドがついているし。
 幸い差額ベッド代のいらない4人部屋でよかった。個室だと1日31500
円。高い上に個室じゃ病院生活の取材にならないし。
 看護師Hさんから説明。喋り方が少し、109カリスマ店員芸の柳原可南子
に似ている。優しい感じに話そうとすると多かれ少なかれそうなるんだけどさ。
 でも、不思議にこっちが元気が出てくる話し方なのだ。
 入院生活の案内とか、手術を含めたこの先のスケジュールとか。
 いつからいつまで寝たきりだとか、尿の管がついているとか、そういうこと
が先にわかるのは心安らか。
 脊髄造影検査や手術の前日に下剤を飲んで朝までにお通じがないと浣腸です
よと、脅され(?)たり。
 普通人としては恥ずかしいから浣腸されずに済ませたいけれど、小説家とし
ては、せっかくの機会だから、そんな気持ちになるだろう、なんて興味も湧く。
 テレビと冷蔵庫も個人個人のベッドについていて、1000円のプリペイド
カードを入れる方式。イヤホンは下の売店で買ってください、ということだけ
ど、もってきたステレオイヤフォンも使えることを確認。せっかくの入院なの
で、人間観察や読書や執筆で忙しいから、あまりテレビを見ることもないだろ
うけど。
 4人部屋には部屋専用のシャワー付洗面所、トイレがある。
 水回りの音で夜中は近くのベッドの人に迷惑なので、トイレは廊下のを使う
ことになるだろう。
 午後3時前に身長体重の測定、検温、ひととおりの説明などが終わる。
 本日の残りの予定は4時から背中の脱毛、5時から入浴。あとは夕食だけ。
 というわけで、空き時間に売店で、必要な資材(T字帯、リハビリ用の上履
き)などを購入。
 隣の人のテレビでは組閣のニュースをやっている。
 午後6時過ぎ、夕食が届く。
 けっこうおいしい。量が少ないし時間がゆったりしているので、茶碗に残っ
たご飯つぶまで丁寧に箸で食べる。こういう気持ちって新鮮だ。さっそく入院
の取材成果が現れたぞ。
 病人の気持ちを自分を使って取材するため、できるだけ食べ物は与えられる
ものだけで生活してみようと思っている。
 それにしてもいいよね。何を食べるか考えなくていいのは。
 つくるにしろ、外食するにしろ、日常のなかでは何を食べるか考えるのがけ
っこう億劫でめんどくさい。食事のことに心や時間を砕くくらいなら、小説の
ことを考えたり、何か新しい知識に触れることに使いたいのだ。
 もちろん、食事はちゃんと摂れば楽しいものだけれど、日常のなかでは自分
に餌をやっているだけで、なんでもいいから食べられればいい。何でもいいの
に選ばなくてはならないのは面倒だ。あてがい扶持というのはほんとに楽でい
いなあ。(これが洋服だったら制服のようなあてがい扶持はすごくイヤだから、
面白いものだ)
 味の区別はつくつもりだし、高価で洗練された食事の価値も認めているけれ
ど、僕は基本的に粗食が苦にならないほうだと思う。それは生き方の勇気の源
泉でもある。粗食で悲しくなるようでは、小説家になろうなんて思い切ること
はできなかったから。
 今日の失敗。要領がわからなくて、夕食の後、マグカップにお茶をもらって
おくことができなかったこと。最初にそういう説明があったらよかったのにね。
 午後8時、音楽を聴きながら寝そべって文庫本を読む。
『喜屋武マリーの青春』(利根川裕)。
 コザの伝説的ロック歌手のことが書かれたノンフィクション。コザへ行くと
いつも会う、宮永英一も少し登場している。
 利根川裕といえば「トュナイト」というテレビ番組のキャスターをしていた
人だけれど、書いたものを読むのは始めて。ふーん、こういう仕事をしていた
んだ。
もってきたオーディオ
 iRiver T10
  Napster 用 および FMラジオ(世間との接点)として
  FMの予約録音もできるので、NHKの定時ニュースを録音してみようか
 Apple iPod Shuffle 512MB (縦長の旧型)
  今回は最近ツタヤでレンタルしてきたジャズ専用に
 Casio EXILIM M1
  SDカードなので、中味の差し替えが可能
  デジカメ兼用(携帯のカメラが病室では使えないから)
 イヤフォンは AudioTechnica のもの2機種(カナル型と耳かけ型)
  カナル型は適度に耳栓効果があるし、そのまま寝入ってしまっても大丈夫
もってきたパソコン
 Sharp MURAMASA
  準常用執筆マシーン バッテリーで8時間くらい原稿が書ける
 Sharp Zaurus SLC-860
  手術後起きあがれないときの執筆用 PDA型 Unixマシン
  夜間の読書用
   電気が消えてもディスプレイで読書ができる
   文字も大きくできるので眼鏡なしでもいい
   実は電子読書は意外と快適
   青空文庫(国木田独歩『武蔵野』など)を何編かもってきている
 翌1時半、すでに十分眠ってしまったので、サロンに起き出してきてこれを
書いている。