東京マラソンでタレントの松村邦洋さんが倒れたという。
除細動器(AED)で一命は取り留めたというけど、後遺症は大丈夫なのかな。
なんだか、いいわけのついた辛い苦しいをテレビで見せて、「**なのにがんばった」と人を感動させる、というのがやたら流行っている。
年寄りなのに、デブなのに、貧乏なのに、(苦労と無縁に見える)美形なのに、お母さんなのに、甲子園出場が決まった直後にお父さんが死んだのに、とかいうやつだ。
そして、そういうのいうのを見て、「わたしもがんばろうと思った」りする。「元気をもらった」なんていう。
いいわけは関係ないよ。マラソンはマラソンだ。野球は野球だ。山登りは山登りだ。柔道は柔道だ。
それぞれやりたい人がそれぞれの事情を抱えてしっかり自分のためにやればいいよ。
元気は人からもらわないで、自分で人生を見つめて前を向けよ。
肥満の人がマラソンに向かないのはわかっている。
それを走らせる番組ってなんなんだろう。
「命がけでがんばります」
言葉としてほんとうにしょっちゅう使われている、命がただの言葉になっている。
その軽さのままに、ほんとに命をかけてしまう人が後を絶たない。そして、無意味に死にそうになったり、ほんとうに死んでしまったりする。
たくさんの人がマラソンを完走するけど、たとえ5時間のタイムだってちゃんとトレーニングしなければ完走できない。でも、その為の努力をする人が今日だけで3万人もあの場所にいた。
それが素敵なのだ。 無名の人が無名のまま、黙々と「自分のために」がんばったのだ。それだけでいいじゃないか、と思う。
友達もひとり走ったはずだけど、どうしただろうと、やがて嵐になってしまった横浜の空を見上げて思っていた。
夜は、連載の第五話を書く。