大学の次に向かうのは、横浜元町。
午後8時少し前、小説家の山口芳宏さんと石川町駅で落ち合い、駅近くの沖縄料理店で飲み始める。
主な話題は、税制を中心とした国政の枠組みについて。
山口さんは、この議論をするために、財源を明確にするためのデータと、政策としての選択肢をまとめたメモを印刷してもってくる念の入れよう。(笑)
僕はこういう話は大好きなので、ほぼ4時間、二人で国の政策のオプションと、全体的枠組みについて議論した。
こうすれば50兆円が確保できるから……、みたいな話を居酒屋で延々4時間やる。
割り勘で4400円くらいの勘定だったところ、太っ腹の山口さんは、「僕の方がたくさん飲んだから」と4000円にまけてくれた。(笑)
推理作家の話は、大きくて細かい。
午前0時過ぎ、店の前で別れ、帰りは元町中華街駅から帰宅。
特別講義のため、本厚木にある東京工芸大学へ。
読んでくれた先生と駅前でランチを一緒に摂るのが最初の予定だったけど、準備に朝までかかってしまったので、昼食はキャンセル。
午後2時過ぎ、本厚木からタクシーで大学キャンパスに向かうタクシーで、言葉遣いもきちんとしていて、感じのいい運転手さんに当たった。
さりげない会話から、どのような頻度で大学に行くのかを確かめ、「お帰りは何時ごろでしょう」と。
その時刻に門外で待つので帰りも利用してくれないか、と営業。
そうしたことも含めて、きちんとした仕事をしていることに感動する。
午後3時から、途中10分の休憩を含めて、90分を2コマの授業をする。
講義のタイトルは「小説家の仕事と、その工学的アプローチ」。
前半1コマ目は、月曜に六本木ヒルズで話した内容を学生向けにアレンジしたもの。
2コマ目は、「小説を書く」というプロセスに於ける道具立てと、心と体のコンディショニングについて、エンジニアリングの視点からのアプローチを語る。
終了後は、往路と同じ運転手さんのタクシーで本厚木駅へ戻る。
雑談しながらノウハウを聴くと、毎日さまざまなデータをとって作ったというグラフを見せてくれた。
いろいろな場所での待ち時間の最大値や平均値、時間あたりの収入、などがわかりやすくなっている。
そのデータから、法律で決まっている休憩時間をどこでとるか、どの時間にどこで待つか、などを決めているのだという。
僕の感覚からすると、商売をするのなら当たり前のことではあるけれど、実際にこれだけのことをしているタクシー運転手に巡り会うのは初めてのことだ。
きちんと仕事をしている人をみると、こちらまでうれしくなる。
運転も応対も、歩行者に対する態度も、とても気持ちがいいものだった。
月曜火曜とイベント続きだったので、連載の執筆が滞った。
というわけで追い込みの日。
そんな午後11時過ぎ、窓の外に一人の紳士が。
考え事の最中だったので、見覚えがある人だと思いつつも、その記憶をきちんとたどることもなく、そのままぼんやりとパソコンの前にいた。
その人が、”「D列車でいこう」文庫10万部プロジェクト”の主要メンバーである徳間書店の営業の人だとわかったのは、しばらく経ってから。
野毛で飲んだ帰りだということだけど、気に留めてわざわざ訪ねてくれたのが、とてもありがたい。
電子書籍の話など、1時間ほど縁側で話す。
来てくれたのはありがたいけど、その分、原稿書きの手は止まる。
というわけで、連載の原稿を送ったのが午前3時半。
そこから東京工芸大学の特別講義の最終準備を開始。
午前4時半過ぎ、完了。
タクシーで帰宅。
仕事場に着いてみると、携帯電話を家に忘れてきたことに気づいた。
夜、約束があるのでその前には家まで取りに戻る必要がある、なんて思いながら仕事。
夕方になって腹が減ったので、食事がてら家に帰ることにする。
やはり、本日同行予定のK書店編集者Tさんから電話が入っていた。
現地に午後9時集合、とのこと。
まずは夕食。
スパゲッティ140gを明太子で和える。おかずは「枝豆豆腐」(横浜橋で157円)。
少し仕事をしているうちに9時が近づいてきた。
少し雨が降っているけど、僕なら傘は要らない。
というわけで、徒歩で、岡野町近くの「ルーサー」へ。
文芸批評家Kさんが、70年代ソウル・ナンバーでDJをやるのだ。
中へ入ると暗い!
ミラーボール!
店の常連だという1955年生まれでYOUに似た女性(東京理科大建築学科卒業:55歳には見えない!)とか、何かというと中央大学出身の先輩作家の名前をいう某モデルに似た女性とかが、なんとなく合流してくる。
なんともはや、70年代ディスコ的混沌が再現されているではないか。
当時の六本木の店の話とか。
ダンスフロアは暗くてあまり顔は見えないのだけど、暗がりで見てもみんな「若くない」ことだけはわかる。(笑)
ちょうどいいので、運動がてら、結構、踊った。
午前0時過ぎ、一つ上の階のバーに移動。
そこへK書店文芸担当取締役Sさんが合流。
Kさんの知り合いの美しい女性たちも居たのだけど、彼女たちそっちのけで、「電子書籍と文芸出版の将来について」みたいな話を午前3時まで。
なんだか不思議で有意義な夜。
午後、仕事場へ出る。
連載の原稿を進めるつもりだったけど、全然、進まず。
午後5時、六本木ヒルズのスターバックスで、時間調整がてら原稿書き。
少しだけ進む。
6時半、49階のアカデミーヒルズへ。
「第三企画室」の編集スタッフ2名と、「フェイク・ゲーム」の売り子をやってくれる徳間書店の編集担当、僕を含め、総勢4名集合。
そう勘定してみると偉そうな「先生」みたいだけど。(笑)
「電子書籍時代の小説家とそのビジネスモデル」
おかげさまで100名以上の聴講者で盛況でした。
終了後は、本日の「阿川組」でヒルズの裏の庶民的な中華料理店で庶民的に北京ダックとビール。
90分の講演でしゃべりっぱなしだったので、どっと疲れる。
帰りは終電。
午前8時前に起床。
朝マック。その足で9時からマンションの理事会。
午後2時過ぎ、バイクで一走り。
暑くもなく寒くもなく。沿道の緑が濃い。
午後5時、いったん帰宅して、自転車で仕事場へ。
4時半か5時に夕立が来ると予想していたのだけど、一時、雨が降ったのは午後6時半頃だった。
午後10時までかかって、六本木ヒルズでの講演「電子書籍時代の小説家とそのビジネスモデル」の資料(.ppt)を作成。
今日はかなり色々な意味で質の高い時間を過ごした一日だった。
(メモ)
399.8km 14.07L 燃費28.4km/L
午前11時、家のことをやっている時に電話。
さる大切な人の法事が執り行われるのに、僕が来ていないという電話だった。
電話の主いわく、僕に伝えた、ということなので、きっとそうに違いない。何ヶ月か前、僕は電話でその連絡を受けたのだろう。だけど、僕にはまったく記憶がなかった。
直ぐに家を出れば1時間遅刻で参加できる場所だった。
その頃にはお経は終わっているだろうが、食事の席には間に合い、お線香をあげることくらいはできる。
しかし、4時間後にどうしても送らなければならない原稿があるのでそれも叶わず。
故人の家族の心を傷つけてしまうことになって、とても申し訳ない気持ちだけれど、どうにもならなかった。
***
過去20年以上、99.99%の重要なことは電子メールで連絡を受け取っている。仕事のことにせよ、そうでないことにせよ。
重要なことが郵便で来ることも希にはあるけれど、それは急ぎでないことが「ほぼ」わかっているので、郵便は月に1度くらい時間を作ってまとめて開封する。
その時に、封書を開いてメモをしたり、(電子的な)スケジュール帳に書き込んだり。
そんな習慣から、電子メール以外で連絡を受けたときに、それを記録しておく手順が失われている。
たぶん、その連絡は電話で受けたのだと思う。けれど、電話を切ったとたんに忘れてしまったのだろう。
考え事をしている時に割り込みで電話があると、相手の人には申し訳ないけど、電話口で話をしていても、実は上の空である。
そして、一日のほとんどの時間、考え事をしている。
結果的に、かかってきた電話で得られた情報はあまり記憶に残らないことになる。仕事場にいるときにはたぶんすぐにメモを取ることが多いのだと思うけど。
(思う、というのはメモを取っていないことは、ほぼ確実に忘れてしまうので、自分のなかでは存在しなくてわからない)
困ったことだ。
困ったことではあるけれど、もっと困ったことは、そんなことが起きないようにする対策がないということだ。
考え事をしていないときだけ電話を受けるというわけにはいかない。そうである以上、僕の代わりに電話を受けてスケジュールを管理してくれる秘書を雇う以外に対策がない。(会社員のときは秘書がいてくれたので、とても助かっていた)
電子メールは、あとで読み返すことができて、メモを取る必要がないので、秘書がいなくて、メールを読んだ瞬間がどんなに上の空でも、忘れることはないのだけど。
だからこそ重要な連絡は互いにメールでするようになっている。
電話で決めたことでも、「今の件、あとでメールしておいて」とメールをもらうようにしている。そうすればその瞬間、電話の内容が頭から離れても情報は確実に残る。
法事の話はその手順にもかからなかったというわけだ。
大切な人の法事に出ることができなくて、僕自身、とても情けない気持ちだし、何より、故人の家族に申し訳ない。
でも、僕がこういう人間である以上、電話はどうしても無理なんだよなあ。
他にも電話でした約束を僕はたくさんすっぽかしているのかもしれない。
ワイシャツ4枚、クリーニングに出す。
いつも自分で洗濯しているのだけど、アイロンをかける時間がない。
4枚のうち、3枚は一度洗濯してあるのだけど、アイロンをかけてもらうためにクリーニング屋に出したわけで。
文庫の第2校を返さなければならない日。
発売まで一ヶ月だが、ラストシーンをけっこういじる。
夜9時頃、完了。
帰り道、コンビニから出版社へ送ったあと、日の出フライで串揚げとビール、都橋「華」で角水割り。
夜なべ仕事疲れで、出遅れる。
家事も溜まっている。
仕事場に出てきたのは午後6時だ。
午後8時からはマンションの理事の会議がある。
1時間ちょっと仕事して、とんぼ返り。
で、その会議が終わったのは午後11時半。
火曜日は連載原稿の日。
多くの場合、翌明け方までかかるのだ。
ご多分に漏れず、午前4時前に原稿完成。
メールで編集者に送付後、中華一番本店で揚げ餃子(350円)とビール(500円)。
まもなく夏至だから、夜明けは早い。
