8月29日
夜中に何度も目が覚めるが、午前7時には爆睡してて、看護婦さんに起こさ
れたときには、寝ぼけ眼。外は曇天。涼しい朝で助かる。(昨日は病室が30
度くらいあって、暑かった)
明日、手術なので、今日は最後の比較的動いてよい日。3食、食べられるし。
というわけで、小休止のような一日。
午前9時ごろ、無性にコーヒーを飲みたくなって1階のコーヒーショップへ。
この時刻の1階は外来患者が往来する立派な「娑婆」である。特別なコーヒ
ーではないのだけど、久しぶりに飲むコーヒーはコーヒーであるというだけで、
おいしい。
病室へもどると、午前10時10分、採血。17日の検査でビルビリンが高
かったようだ。
ひきつづき、麻酔科の医師が説明にくる。
クスリのアレルギーがないことを確認、手順の説明。
全身麻酔から覚めた後の吐き気については、女性は3倍くらい起こしやすく、
喫煙者は起こしにくく、乗り物酔いをしやすい人は起こしやすい、ということ
だ。
乗り物酔いを起こしやすい体質だけれど、女性じゃないし、喫煙者なので大
丈夫かもしれない。
そういえば、午前11時現在、検温と血圧測定が来ていない。僕がいない間
にきたのかもしれないけれど、このまま1回パスになるのだろうか。
自覚的にはなにも問題ないけれど、病院の手順としてはあまり褒められたも
のじゃないな。作業の抜けがチェックされていない。
(結果的には、あとでちゃんと来た)
重大なことに抜けがないように、あらかじめ知らされている手順については、
患者の方も注意しておく必要がある。病院のせいだ、といっても被害を受ける
のは患者自身だから。
よく「先生や看護婦さんにすべてお任せします」と盲目的になってしまう患
者がいるけれど、医師も看護師も病院というシステムも、すべてがミスがなく
動くはずはない。これは製造業に於ける品質管理の考え方と同じで「人はかな
らずミスを犯すものである」という前提で、患者自身も含めて、そのミスをな
くすメンバーのひとりになってQC(品質管理)活動を続けなくてはならない。
そのためにも次に何をするのか、入れている点滴や飲んでいる薬はどういう
作用をするのか、きちんと知識として知っていた方がいい。医療過誤のリスク
はある程度患者自身でも減らすことはできる。多くの医療事故はミスが原因で
あり、ミスさえなければ現代の医療はかなり安全になっている。
(病院のシステムは患者に知識がなくても安全に運営できるように構築すべき
なのはいうまでもないけれど)
僕が受ける「腰椎後方除圧術」という手術も、手術自体の安全性は高いけれ
ど、検査で被爆することによる長期的な発ガンのリスクもあるし、たとえば点
滴で間違った液を入れられていまえば、あっという間に死んでしまう。
病院というのは緊急事態が日常的な場所だから、自分の治療が安全でも、他
の緊急事態の影響を偶然に受けてしまって、ミスが起きる危険にさらされるこ
とがあるわけだ。
ひとりの危篤患者への対応によって芋ズル式に思いもよらない連鎖が起きて、
自分の命が危険になる可能性だって十分にある。山道を歩いていて落石にあっ
たり、町を歩いていてビルの上から自殺者が飛び降りてきたりするように。
医師や看護師を信用するというのは、その技術や経験についてであって、ミ
スをしないという意味では人間であるかぎり信用はしない方がいい。というよ
りQC(品質管理)の基本として、人間はミスを犯す存在である、といつも認
識している必要がある。現在の高度医療は薬剤機材の製造業者流通システム、
病院内での物流システム、手術室内でのチームワークなど、何百人という人が
関わってできている。そのどこにミスが潜んでいるかはだれもわからない。
最後に、飛んでくる石を避けるのは自分なのだ。
掃除に来るオバサンはけっこう大柄な人。
特徴は、和製洋物ミュージカルの役者がカツラをかぶっているような真っ白
な縮れ毛の髪。ハンバーガー屋のマイケル・マクドナルドの赤毛を白髪にして
女にした感じ。(制服も色違いの青だが似ている)
27日、向かいの人が退院していった後の掃除のようすをとくと観察。
おもったとおり、大雑把。四角いところを丸く拭く。(僕の収納棚の裏にだ
って先人が落としたらしい帽子があるくらいの仕事ぶり)
プリペイドカード式の備え付けの冷蔵庫の中も、外回りと同じ雑巾で拭いて
いた。(これはオバサンが悪いのではなく、掃除の作業仕様がそうなっている
のだと思う)
ちなみに、当病院。各人に専用のテレビと冷蔵庫が備え付け。
ただし、1000円のカードを買ってそれを差し込むことで動作させる。僕
はどちらも使っていない。
今回の入院のテーマのひとつに「テレビのない生活を体験する」というのも
あるし、「病院食だけで暮らす」というテーマもあるので、どちらも不要なの
だ。
このテレビは目の前に鎮座していて鬱陶しいけれど、4人部屋の向かい側の
人がベッドを起こしていても互いに目が合わない、というプライバシー効果も
発揮している。
また冷蔵庫は、冷たくなくても収納スペースとしては使える(容積効率はよ
くないけどね)
午後、担当医が立ち寄る。
再検査でもグロブリンの値がよくないのを麻酔医が気にしているので内科医
の所見をもらうとのこと。手術できなかったらいやだなあ。
検温36.5度。僕としては高いな。もう少し水分を摂った方がいいか。
血圧114/60。
入院したとたん、運動不足がひどくなるので、それだけで体調は悪くなる。
どちらかというとお通じはよすぎる系の自分が浣腸騒動になったりしているの
も、軽度の脱水と運動不足のせいだと思う。
装具(コルセット)の領収書と医師の証明書がクラークから届く。これで保
険組合に申請すればコルセット代の払い戻しが受けられるはず。
午後3時半、空の鳴る音。
8月のこの時刻とは思えない。外は薄暗く、窓から見えるマリンタワーの燈
台の光が眩しく見えている。臨港パーク沖の海にだけ雨が降っているのがわか
る。そしてまもなく、下に見える道路の色が黒く変わり始めた。風力発電の風
車は回っていない。
やがて雨脚で産みも風車も見えなくなった。
ガラス面積が広いので、台風の時に入院していたら壮観だろう。
入浴は午後4時半から。この先、4日ほどベッドから出られないので、これ
でもかとよ〜く洗っておかなくては。
(身体を拭いていたら、勝手に開けて「あらだれか入っているのね」といって
謝りもせず不機嫌に閉めていくオバサン。やっぱりいたよ、こういう人。これ
だから病院はネタの宝庫なのだよ)
これを書き込んだ後は、しばらく日記の更新ができなくなります。
ちゃんと麻酔から覚めれば、1週間後にはまたお目にかかれるでしょう。
