新学期が憂鬱だった

 8月最終日。
 
 いつも宿題は7月中に済ませていたから、夏休みが終わる日にそれで焦ったことはない。
 それでも、小学生の頃、明日から学校が始まるのがとにかくいやだった。
 小学校の授業って、教科書読んだら全部書いてあるのに、それを凄く時間かけて先生が話す。
 授業の最初の5分で自分で教科書読んで「あ、そういうことね」と理解して、しょうがないから、あとは窓の外を見ている。
 毎日が退屈との戦いだった。
 毎日毎日、教科書を5分読めばわかることを45分かけて説明する先生の話を上の空で聞きながら、時間が過ぎるのを我慢する日々。
 あまりにもヒマだから、暇つぶしに、手を挙げて質問したり、先生の質問に手を挙げて答える。
「みんな、これについてどう思う?」
 先生は、まず生徒に疑問を投げかけ、それから時間をかけて、授業の中で正解に辿り着こうとしていたらしい。
 でも、その投げかけは、教科書を読めば書いてあることだったり、他の本で読んで僕が知っていることがほとんどだった。
 だから、僕は、先生が最初に投げかける質問でほとんど正解を答えられた。
 誰も手を挙げないときに、僕だけ手を挙げるから、先生はしょうがなくて僕に当てる。
 すると僕が正解を言ってしまう。
「あまりにもすぐに正解が出てしまうと、授業になりません。わかってもあまりすぐに答えないようにしてください」
 父母の面談で母がそう言われて帰ってきたことがあった。
 子供心にとても理不尽な気がした。