みなとみらいホールfで、クラシックの演奏会を聴きました。
ウィーン放送交響楽団
指揮者:ドミトリー・キタエンコ
ピアノ:ヘルベルト・シュフ
(曲目)
グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調
チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調
席は1列1番。最前列の一番左。
ふつう、こういう席は「いい席」とは言われないのですが、僕は割と最前列とか好きだったりします。
オーケストラの楽器の生音が直接聞こえて、いろいろな方向から楽器の音がするのが楽しい。
今回は一番左の席なので、第一バイオリンの一列目のさらに外側にいるという感じ。さらには弦楽器の後ろにかまえているパーカッションの3人が、障害物なしに全部見える。
だいたい僕が音楽を聴くときは、自分が演奏しているつもりになって聴くので、第一バイオリンの末席にいるような感じだし、ほとんどの時間何もしていないシンバルとかトライアングルを「ここぞ」と入れる瞬間までの打楽器奏者の呼吸とか、そういうのがわかる。
あと、コンチェルトの指揮者とピアニストが目でコミュニケートしているのがすごくよくわかる。
で、演奏ですが、とにかく弦楽器のアンサンブルが完璧でした。
ニュアンスの解像度が高くて情報量が多いのだけど、すべての奏者がピッタリ合っていて、ほんとに全員でひとつの楽器のよう。ビブラートのかけ方にもばらつきが無くて、完璧に揃っている。ピッチもほんとに正確で音に濁りが少ない。ひとりひとりの技術が確かでないと、これだけニュアンス豊かな演奏をこれだけ揃えて演奏することはできないと思う。
だからとにかくストリングが無音から弱く音を出し始めるような部分があるとぞくっとします。
管楽器は、フルートとトランペットがちょっとピッチがずれるときがあったけど、もともと管楽器のピッチってそんなものかもしれない。僕の席の位置からいって、管楽器が目立って浮いてしまう傾向があるので、ちょっと管楽器には不利な場所だったかな。
打楽器もすごくよかった。特にシンバル、完璧。ティンパニ、滑らか。
プロ演奏家のトライアングルのバチの使い方、生まれて初めてちゃんと見ました。(笑)
僕はチャイコフスキーという作曲家はそれほど好きじゃなかったんです。
やたらメロディアスで、言ってみれば歌謡曲みたいな音楽だと思っていた。
自分で積極的に聞くのはバイオリン協奏曲くらいで、他は自らは選んでは聞かない、という感じでした。
もちろんスコアを見たこともないので、レコードやCDなんかを聞いた印象です。(いえ、スコアを見たって読み切れないですけど)
けれど、今日、第一バイオリンの一番尻尾の場所で聞いてみて、初めて曲がわかった。なんだ、チャイコフスキーさん、いろいろ細かいこと仕掛けてやってるじゃん。いままで知りませんでしたよ。という感じ。
それは指揮者キタエンコの作り込みがちゃんとしていたからかもしれません。全然漫然としてないの。次にどう来るかというのを、上手に裏切ってくれる小技が一杯入ってる。上質のジャズのインプロビゼーションでビビッとくるのとおんなじ感じ。
とにかく、生まれて初めてチャイコフスキーを聴いて「ああ、いいな」と思いました。新発見。
ピアノのヘルベルト・シュフは、とても滑らかに弾く人で、インパクトはないけれどきれいな演奏、というか、まあ上品な演奏だと思いました。
僕自身はピアノにパーカッシブな音を期待する人なので、こういう演奏は好みとはちがうけど、コンチェルトの在り方としてはこういう演奏はアリなんだろうと思います。このオーケストラがアンサンブルに特色があるから、ソロピアノもその一員として溶け込むような演奏、というのはひとつの在り方です。
関係ないけど、コンチェルトが終わって休憩時間にピアノが僕の席のすぐ前に片付けられてやってきたのだけど、席からステージのピアノを見上げることになるもんだから、スタインウェイを裏から見ることになって、その屈強な骨組みに関心しました。それと、脚についているホイールの機能美がとっても美しいの。
クラシックの演奏会は久しぶり。
満喫しました。
僕が夢見る人生最高の贅沢は、自宅にベルリンフィルを呼んで演奏してもらって、そこで居眠りをすること。
ウィーン放送交響楽団
ウィーン放送交響楽団
2009年3月5日(木) 愛知県芸術劇場コンサートホール