手術後4日目 DAY5:9月3日
「ベッド起こしていいですよ」
新しい朝が来た。希望の朝だ。いままで30度までしか起こせなかったベッドを椅子のようになるまで少しずつ起こす。目の前の視界が開ける。
しかし、痛いので長くそのままではいられない。つまり座っていることもできない体だってわけだ。なかなかきびしい現実である。
空はゆっくりと晴れてくる。隣は本日手術。
起きて朝食。同じ牛乳も起きて飲むだけで美味しい。
えぼ鯛の干物、おいしい。おにぎり1個半。みそ汁、スプーンでなく口をつけて飲む。おいしい。
しかし、起きていると背中が痛いし、ひどくつかれる。おなかも詰まっている。やっとの思いで薬を飲んで、真横にベッドを倒すとほっとする。まるで病人(いやたしかに病人なんだけど)
午前9時過ぎ、ベッドに座って起き上がる。起き上がるときが痛いがきちんと座ると傷みもない。ベッドにいる時のように当たるところがないから、しばらくその姿勢を満喫する(笑) 医師が来るのが待ち遠しい。
午前10時すぎ、ナースステーションに「回診ですの声」。
来るぞ来るぞ、て、お化けが来るわけじゃない。
まもなく医師がやって来ていう。
「立ってみましょう」
思ったよりもうまく立つことができた。手術室に入ってから約96時間後のことだった。
廊下を片道20mほど行って戻って、合格! 今日から立ってよし。
エヘン! わぁーい!
バルンカテーテルを抜かれるにゅるっという感触。
うれしくて、電話したりメールしたり。
(つまり、歩ける、ということは携帯電話の使える場所まで移動できる、ということでもあるわけだ)
美人のナースがエスコートについてくれて、歩行練習。きゃ、デートみたい。(ただし中学生のデートね)
トイレ、無事、自力で小ができた。(長くバルンカテーテルを入れていると、外した後、自発的に排尿ができなくなることがあると聞いていたので、心配だった)
しばらく、自分で歩いたら、無事、ふつうの排便もできた。これで最大の悩みが消えた。自由だ。
その後、ひとり歩行練習中にいろいろなナースとすれちがうたびに「うんち出ました?」。(別に僕が特別うんち騒ぎを起こしているんじゃなくて、便通は通過儀礼だからなのだ)
午後、リハビリの先生が来てくれて、一緒に歩く
明日からは、こちらがリハビリ室に出向く。
『4Teen』(石田依良 新潮社)読了。
14歳の中学生4人組の日常における冒険物語。
いい小説でした。言葉そのものが生きている。こういう小説が評価される(直木賞受賞作)ということはうれしいことだ。僕が書きたいテーマ(のひとつ)とかなり被っている。僕が書けば自然にちがうものになるので、被っていること自体は気にならない。
それについては、先日、K書店取締役と話をしたときの会話を思い出す。
「たとえ同じストーリーを書いたって、同じ小説になんかなりっこない。勝手にちがう小説になってしまいます。だから、無理に先行作品を気にする必要なんてないんですよ」
そうかもしれない。
