エスケープ

 まもなく一時帰国なので、その準備を始めている。
 日本滞在は一ヶ月。新刊のキャンペーンが主な目的だ。
 沖縄が舞台の小説なので、執筆に協力をしてもらった人たちにお礼を兼ねて沖縄に行くことも検討。沖縄での販売促進キャンペーンも。
 黄金町のイベントも2回つづけてお休みしているので、参加しなくてはならない。
 ヨットにも乗りたい。
 編集者との打合せもある。
 イタリア滞在中の会計処理をするとか、銀行の残高を確認して次のイタリア滞在期間のために資金を移動しておくとか。
 そんな主だったことに、その他の細かなことを evernote にリストアップ。
 日本にいるあいだに、眼鏡をつくるとか、歯医者に行くとか、髪を切りに行くとか、しばらく放ったらかしでまたその後も放ったらかしになる車やオートバイのバッテリーの心配とか、治らない肩のために整形外科に行くとか、毎年8月にある矯正歯科の年次チェックを済ませておくとか。
 そうした雑事の間に、長編の改稿。
 そして、書店周りとか、サイン本とか色紙の作り込みとか。
 イタリアにいるときは、基本的に執筆と生活だけで、その他のことは、してもしなくてもいいことばかりだけど、日本に帰るとしなければならないことがたくさん待ちかまえている。
 よく「海外にいると大変で、日本に帰ったらゆっくりできる」というように言われるのだけど、それは逆なのだ。
 シリコンバレーと東京を行き来していた、人生で一番忙しかった時も、何時間も誰にもわずらわされない飛行機の中とか、時差で日本が眠ってしまっている時間とか、そんな時間が、日頃の忙しさから解き放たれた貴重な時間だった。
 いま、イタリアで、そういうエスケープの時間をまとめて何ヶ月という単位でとっているわけだ。
 夜、8時半から、テレビで EURO 2012 イタリア代表のサッカーの試合を見る。