バンクーバー 4日目 単独行動

 今日は、ひとりグループから離脱。
 小説家としては、観光地だけでなく、この町の普通の暮らし方、町の空気などを知る必要があるので、そっちの取材モード。
 まずはリッチモンドのふつうの町の観察。
 ホテルから鉄道駅へ。徒歩10分あまり。
 主筋時間帯の駅では無料の新聞を配っている。
 ひっきりなしにバスが着いて、人々が鉄道の改札に吸い込まれていく。
 ホテルから駅までの道には、我々が止まっているラマダホテルの他、シェラトン、マリオットなどなど、いくつかのホテルがある。
 線路沿いの区画はそれぞれずっと商業モールになっていて、ほとんどが英語の他に中国語の看板が出ている。もちろんそれは飲食店だけでなく、マッサージの店、法律事務所、旅行社、ようするにすべての店や事務所が。日本食のレストランですら「日式」と中国語表示。
 大きな中国系スパーに入ってみる。
 ふつうに巨大な品揃え。値段は東京とあまり変わらないが、品揃えが豊富な文だけ、同じものを買っても豊かな気持ちになる。
 観察しながら一駅歩いて、Lansdowne からスカイトレインに乗る。
 リッチモンドからだとゾーンを跨ぐので、2ゾーン90分乗り放題の4ドル。回数券だと、時刻刻印機でスタート時間を刻印すると90分間乗り放題になる。
 一見したところ立派な自動改札機のようなものが並んでいるが、動作していなくて、チケットをかざすでもなく、出るのも入るのも、ただ自由に通過するだけ。
 チケットは要するに検札があったときに「料金を払って乗っているよ」と証明する領収書だ。
 ヨーロッパでもそうだけど、多くの国で、鉄道の改札は実質フリーパスだ。
 お金を払わなくても乗れるが、検札で無賃乗車が見つかると大きな罰金が科される。
 一人たりとも無賃乗車を許さない高価な自動改札機を設置するよりも、たまにただ乗りをする人間が居ても、その方が安上がりだから、結局、お金を払って乗る人にとっても、安い運賃で電車に乗ることができるシステム。
 僕はこのヨーロッパ式の方が合理的だと思う。
 カナダ線グランビル駅で、一旦外へ出て、エキスポ線に乗り換えて、スタジアム・チャイナタウン駅で降りる。
 駅からしばらく歩いて、大きな門をくぐって中華街に入るあたりからは、街に落書きが多い。中国人も出て行っていて、空きテナントが多い地区。
 縦に、キャロール、ケベック、メインの3つの通りの挟まれたあたりがチャイナタウンだが、南から北へイーストヘイスティング通りまでぎりぎりいいとして、そこからイーストコルドバ、パウェル通りあたりは、荒れていて、ヤク中でふらついている人間をたくさん見かける。視線が定まらないまま何かひとりごとを言っていたり、道路に座り込んでいる人間も多数。
 街路樹にぶつかっているのに、そのまま歩こうとして、自分の力で木に跳ね飛ばされて転んで、またふらふらと立ち上がる、というような人たちが視野の中に何人もいる。
 人間のそんな姿を見るのはとてもショッキングだ。
 とてもカメラは構えられない。
 ホームレスやヤク中、アル中の多くは先住民だそうだ。
 詳しく聞いたが詳細は省くけれど、先住民を蹂躙した歴史的なことが積み重なっていて、少なからぬ先住民が最底辺に落ちこぼれている。
 バンクーバーはものすごく治安のいい都市で、きれいな街だが、例外的にこのあたりは、極端に荒廃している。
 イーストコルドバ通りを西へ行くと、お洒落な街、ガスタウンに続いている。
 日本人の若い女性も歩いている。原宿のような所だ。人々の眼差しは優しく、治安もいい。
 だが、そこで、人混みにまぎれてヤクの取引をする現場を見た。
 中心部へ戻り、ショッピング街のロブソン通り、劇場外のグランビル通りをリサーチして、集合場所のハイアットリージェンシーで、クラス会組と合流。
 食事はガスタウンの「オールド・スパゲッティ・ファクトリー」。
 またしてもスターターはカラマーリ。