家に着いたら、荷物を開いて、シャワーを浴びる。
冷蔵庫になにもないので、期限が迫ったインスタントラーメンなどを食べてみる。
近所へ出てみると、みなとみらいグランドセントラルタワーというのが僕がイタリアへ出てまもなくオープンしたらしく、飲食店や物販の店が入っていた。
事務所のようすが心配なので、黄金町へ出向く。
3月末で再開発のために引き渡された日ノ出町の竜宮美術旅館を始めとする一角はすでに更地にでもなっているかと思いきや、ほとんどそのまま残っていた。
二ヶ月ぶりの仕事場は、締め切ってあったにもかかわらず、黴びるでもなく何もかも無事だった。めでたしめでたし。
家に帰っても食べる物がないので、「聚香園」で夕食をとり、「華」へ立ち寄って帰宅。
時差ボケでなんとなくぼんやりした一日だった。
帰国便はスイス航空。
ベネチアからチューリッヒまでエアバスA320。
チューリッヒから東京まではスイス航空のエアバスA330ー200。
僕が頻繁にアメリカを往復していた1980年代から90年代初めには、機材はボーイング747ー400あたりが全盛だった。
いまでは、その頃と比べて、内装の装備は格段に進化していて、エコノミークラスでも席の前それぞれに液晶ディスプレイがあり、ビデオオンデマンドがあったり音楽のチャンネルも豊富にあるのが当たり前になっているようだ。
一方、窓の外にある主翼を見ても大きな変化がある。
航空機の外装の工作精度が1980年代の物と比べて格段に上がっている。
かつて、窓の外から翼を見ると、リベットは出っぱっていたし、主翼はジュラルミンの板を貼り合わせた痕跡がはっきりとわかる物だった。精度も悪く翼の表面は波打っていたし、フラップはきれいに揃わずに微妙に暴れていた。
ところが、A320もA330も、翼がとても滑らかで精密につくられている。
翼の形は、多分、設計された形に極めて近い。
形を見るだけで揚力が計算値に近く、空気抵抗が小さくなっていることがわかる。
ヨットの帆(飛行機の翼を水平でなく海面に垂直に立てたのと理論的には同じ働きをする)でいうと、ツギハギの布で作ったセールと、カーボン繊維やラミネート素材を駆使して一体成形でカーブをつくった縫い目のないセールほどの違いがある。
(腕前以前に経済上の問題で、我が艇とトップレーサーではセールを見上げただけで推進力に雲泥の差があるのが一目瞭然だ)
空気の壁を切り裂いて高速で飛ぶ航空機は、ほんのわずかなリベットの頭ひとつの出っ張りの空気抵抗が馬鹿にならないし、揚力を産むべき翼の工作精度が悪いと、揚力が十分に発生しないで逆に抵抗が増える。
この20年の航空技術の進歩が、飛行機の翼の形に表れている。
航空機のことは詳しくないけれど、A330も翼の前の部分と後方のフラップなどの可動部分の他は、カーボンファイバーでできているのではないかと思うような、ほとんど継ぎ目の目立たないきれいな翼の形をしている。
しかも、気流の変化で機体が揺れるときの翼のしなりも小さい。つまり固そうに見える。
三菱レイヨンとか東レとか、相当大きなカーボンファイバーの構造物を作れるのではなかったっけ?
チューリッヒから東京(成田)までは、スイス航空のコードシェアのエーデルワイス航空。
初めて乗ったけど、サービスも必要十分で食事も美味しかった。
運よく空いていて、隣の席が空いているので、エコノミークラスの窮屈さもない。
なんとなんと! プロセッコがあったので喜んで頼んだ。
いま、機内でこれを書いているのだけど、一昨日はキーボードを打っても痛んだ肩が、わりと収まっている。
というわけで、帰国しました。
