
湾岸「日の出」にタブロイド新聞を印刷していた工場があった。
往時には輪転機の音がさぞや騒がしかっただろうその工場は、いまは閉鎖されて、脇を走り抜ける首都高の喧噪の中に音も立てずに、ただ存在している。
印刷メディアの墓場のようなその場所を、更地から再開発するのではなく、建物をそのまま活かしてコンバージョンするとういう手法をとることにした人がいる。
デザイナーやアーチストを集める Tokyo Creator’s District (綴りママ:むしろ Creators’ だろうと僕は思うが)あるいは TABLOID と名づけた場所の開発直前、工場から輪転機が除かれた直後の状態を取材することができた。
ゆりかもめ「日の出」の駅にそのまま隣接しているそのビルには、「夕刊フジ」のネオンサインの残骸が残されている。
導かれて入った建物の壁には、インクの汚れが至るところ残され、床も油っぽい。
空中を行き交うワイヤーハーネス(配線の束)や、文字がそのまま残るホワイトボード、そして、標語の書かれたポスター。
これは「現場」である。現場の残骸だ。
インクにまみれて輪転機のメンテナンスをしていた人の、呼吸が聞こえるような。
製造業で働いていたことのある僕には、どこか懐かしい空気をもったところでもある。
そこを、ニューヨークの SOHO や、ロンドンの South Bank のように、アーチストを集めることで、ビル一つに留まらず地域に血液を呼び込もうと狙っているという。
僕がスタジオをもつ黄金町のコンセプトに、似ているようでもあり、また同時に、似て非なるもののようでもある。
いずれにしても、ビルや町が変態を遂げていく様を見るのが好きな僕には、ちょっと魅力的な定点観測の対象ができた。










