日: 2020年9月29日

渇きとの戦い

ICUは賑やかだ。
患者と看護師医師との会話もさることながら、医療スタッフどうしも割と和気あいあいとやっている。

隣のご婦人は87歳、おむつをしていてうんちが出てしまうらしく、ナースコールをしては仕切りに申し訳なさそうにしている。その度に看護師さんが「いいんですよ、いいんですよ」となだめている。

別の看護師同士の会話。
「ドレーン浴びちゃった」
「えええええっ!」
「全部。ズボンビショビショ」
「靴は?」
「靴も結構新しいのに、もう捨てるしかないなあ」

ドレーンというのは体腔内に溜まる体液を体外に排出するために入れる管のこと。
医療の世界では自分以外の他人の体液(血液など)はうんちと同等に汚いものとして扱われているので、「ドレーン浴びちゃった」は看護師にとっては「うんこ浴びちゃった」に匹敵する意味を持つ。
常に感染の危険と背中合わせの仕事だ。

そうした様々な会話や音を聞きながら、ほぼ上を向いたまま過ごす。